権丈善一
4 回目
いかにその政策により支持層を広げて、統治を安定させるかという目的で、多くの国で運営されている
能力に応じて負担してもらう社会サービスは、給付の段階では所得を見ないことで、制度への不満減らして、積極的に協力してもらう意図 → 国民みんなが支持して為政者にとって得という判断
医療、介護、年金保険は、少子化の原因でもあり、少子化により持続が難しくなるものでもある
だから、それらの制度が子育て支援制度を支える意義がある
「企業を含め社会経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で、広く支え合っていく新たな枠組み」に沿ったもの
健保組合で運営している医療保険と介護保険の両方が子育て支援に協力する方法を考えてもらいたい
社会保険と財源調達力がものすごく高い消費税を並べることはできない 社会保険からの財源調達を選び、かつ所得制限をなくす場合は、給付の範囲は相応に絞る必要がある
児童手当のような現金給付は、場合によっては社会保険の調達力を軽く超えて、無理が生じる可能性がある そのようなものについては、社会保険からの支援に制限を設けて、それを超える部分については税を用いることを費用負担者たちと事前に契約しておくことも今は重要
公的年金積立金の投資先として、未来を担う若い世代に向けた人への投資を加えることは矛盾しない
必要に応じて奨学金の給付を行い、その後、能力に応じて返済する制度を導入すれば、再分配制度を組み込んだ国民皆奨学金制度ができる
この国でのこども・子育て政策はスピードが命ということを強調
3 回目
なぜ労働組合が組合員以外にも給付が回る制度を支持するのか? (北欧の話)
多くの人々は就業人口と非就業人口との間を行きつ戻りつするのが普通 → 働けない人々、働いていない人々に社会保障給付という形で社会的賃金が支払われれば、長い目で見て労働者は報われる 働く人たちはみんな仲間というような国における話
働く人たちが二重構造になっていたらそうはいかない
労働者間の連帯の意識を醸成するための制度を政治的判断としてつくることが政策課題にもなる その場合、制度を創設するときに、政治は当事者たちが支持していない判断を将来のためにしなければならない
未来を生きる人たちは必ず感謝することになる
社会保険の労使折半について
そこで労使折半という負担のルールがつくられた
理由づけは、資本主義から最も利益を得ているのは経済界であるから 資本主義の存続に不可欠な労働者の生活を守るために、企業も折半で負担する
それに加えて、今は、人口減少が将来の労働力のみならず、 未来の消費、投資需要の縮小をもたらという理由がある
これは経済界全体のマクロの観点から見た場合に問題を意識するという合成の誤謬の話 日々の企業経営というミクロの観点からは、やはりそうは言っても労使折半には反対したいということになる
合成の誤謬の問題を解決するには、将来に向けた確固たるビジョンを持った政治の力が必要
「企業を含め、社会・経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で広く負担していく新たな枠組み」 を考える際には、社会保険の仕組みを視野に入れるのは十分にあり得る
2 回目
今この国は本格的に労働力希少社会に入ってきた
女性の就業率はかなり高い水準
賃金の伸び率を決める一次要因は、どうも労働市場の逼迫度合いである
市場が弛緩していたら掛け声をかけても上がらず、逼迫していたら自然に上がるもののようである
数十年間、この国は、高齢者と女性という労働力を非正規という雇用形態でとても安く、毎年増加する形で雇うことができたが、それがいよいよ枯渇し始めている
労働力希少社会では、広く社会全体で子育て世代を支えるという政策 (社会的賃金の充実) をしても、個別の賃金上昇のモメンタムはそう簡単に失われることはないのではないか 1 回目
医療、介護、年金保険のような高齢期の生活費を社会化すると、普通に考えると少子化が進む 少子化の解決策は 2 つしかない
出産と育児に関する消費を、例えば介護のように社会化していくこと 家族が合理的に行動した場合の親の個人的利益と国民の集団的利益の間に衝突が生じる
少子化の予防策として、全てのこどもを対象とする普遍的福祉政策を唱えた
人間は価値を感じることには喜んでお金を出すので、負担者の満足感を高める制度設計も重要