国民民主党の 178 万円の壁と 「ミッションコンプリート」
国民民主党の 178 万円の壁と 「ミッションコンプリート」
https://x.com/i/grok/share/a3659680f5a540e6a370703af2342b66 より
【ミッションコンプリート事件の本質】ミッションコンプリート事件とは、
「基礎控除の所得制限なしの引き上げ」を求めてきたはずの国民民主党の議員が、まだ所得制限が残っている状態の案に合意し「ミッションコンプリート」と喜んでしまった事件である。「ミッションコンプリート」発言に対し「所得制限された2割を取り残すのか」「裏切られた」と反発する層と、「いや、『今後も所得制限の撤廃を求めていく』とちゃんと言ってくれている」「100点じゃなければ評価しないというのはおかしい」「今後に所得制限の撤廃が可能なのは国民民主党だけだ、党を大きくする必要がある」などと、議論が起こっている。
この議論、どちらが正しいとも言えない。
なぜなら、どちらも本質的な理解に欠けているからだ。そこで、2024年10月以後、国民民主の「年収の壁騒動」を観察してきた私、山串が、第三の視点から解説する。私の主張の要点を、箇条書きにて目次のようにまとめると下記の通りである。(1)基礎控除の所得制限とは何か(2)国民民主は「低中所得者の負担を軽く、高額所得者の負担は重く」の党だった(3)2024年(令和6年)衆院選からの国民民主の「103万の壁騒動」(4)「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」の限界(5)国民民主が提出した法案は、所得制限前提のものだった(6)基礎控除の所得制限を撤廃しての上乗せは事実上、不可能(7)与党案への国民民主からの批判(8)「178万合意」そして「ミッションコンプリート」(9)おわりに各項目の詳細は次回以後の投稿にて。
基礎控除の所得制限
「超過累進課方式」
累進課税と「所得控除」の相性の悪さ
超過累進方式である所得税において「所得控除」という減税方法は、「高額所得者ほど減税額が増える」という特徴がある。この現象は、元から高額所得者ほど高い税率が適用されているから起こるのであり、この現象をもって「高額所得者優遇」と安易に表現してしまうことには語弊がある。
その一方で、「累進課税の趣旨と矛盾するのでは」という考え方もあり、これは所得税の世界では、全世界的に、定番の議論である。※参考リンク https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2022/4zen19kai1-4.pdf
③「所得控除」に変わる方法
累進課税と「所得控除」に相性の悪さを回避するため、所得控除方式に代えて、以下の方法が既にある
税額控除(給付を伴うものと、伴わないものとがある)
ゼロ税率、
変動式の基礎控除(給与所得控除のような計算を用いる)
世界各国でそれらの制度を採用している国もある
イギリス:逓減式で最後はゼロに
カナダ:税額控除、且つ逓減式
スウェーデン:変動式
フランス・ドイツ:ゼロ税率方式
④基礎控除の所得制限(逓減式)の意味
「基礎控除の所得制限(逓減式)」とは、所得控除から税額控除への置き換え、ゼロ税率方式への置き換えと同じように「高額所得者の負担を増やし、低所得者の負担を減らすための方法」
⑤税額控除に置き換えようという風潮
日本の基礎控除はスタンダードな所得控除方式であったため、基礎控除の数字を上げると「高額所得者優遇」のイメージがあり、また実際に多くを負担している高額所得者からの税収が減ってしまうという現実的な問題のため、気軽に変えにくい状況
平成28年頃、国会では野党を中心に、高額所得者の負担がもっと増えていいという考えが増えていた
そこで、税制改正の案として、高額所得者の負担を増やす方向性で検討がされ、既存の所得控除方式から税額控除方式への変更や、基礎控除の所得制限(逓減式)等が候補に挙がり、結果としては逓減式が選ばれた
これが、令和2年からの「基礎控除の所得制限(逓減式)」
※当時の議論について、最も象徴的で結論的な参考として、平成30年2月の衆議院での、総理大臣の発言
安倍内閣総理大臣
平成三十年度税制改正においては、所得税の基礎控除については、
高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要性は乏しいのではないかとの指摘を踏まえつつ、
現行の所得控除方式から税額控除方式に変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないこと等を考慮して、
逓減・消失型の所得控除方式を採用することとしたところであります
https://kokkai.ndl.go.jp/simple/detail?minId=119604376X00520180228&spkNum=58#s58
⑥一般人の理解は遠く
基礎控除の逓減式の採用によって、サラリーマンの年末調整の書類の中に「基礎控除申告書」が加わることになった。
しかし現実には、国民の多くは基礎控除申告書について、意味も分からずに名前を書き、基礎控除に所得制限があることすら知らない、と言える状況
<<重要>>
「高額所得者の負担を増やすべきか否か」というテーマは立場や考え方によって意見が異なって当然であるため、ここではその是非については言及しない。
時と場合によって様々な意見があるだろうし、健全な議論を経て、民主主義的に決めるのが理想であるしかし、基礎控除の所得制限を受け、相対的に税負担を増やされた高額所得者の層が、面白くないと感じることは、ごく自然なことであろう。
(2)国民民主は「低中所得者の負担を軽く、高額所得者の負担は重く」の党だった
①給付き税額控除の導入を提案
国民民主党(玉木氏)は、長らく給付付き税額控除の導入を訴えてきている
2015年 https://x.com/tamakiyuichiro/status/675216657447526401?s=20
2019年 https://x.com/tamakiyuichiro/status/1152237838303236096?s=20
2020年 https://x.com/tamakiyuichiro/status/1332289807360290818?s=20
2021年 https://x.com/tamakiyuichiro/status/1371675344856518656?s=20
2023年 https://x.com/tamakiyuichiro/status/1709915887975956728?s=20
(1)③で述べた通り、税額控除は、「低所得者を支援・負担を軽くし、高所得者の負担を増やす」方法で、方向性としては「基礎控除の所得制限」と一致
(※とりわけ給付付きの税額控除(Refundable Tax Credit)は、より一層「低所得者支援」の性質が強いため、生活必需品にまで負担がかかる消費税のような税の増税の緩和措置として用いらられるケースがある)
②2023年の減税案で「所得制限」
玉木氏が2023年10月に投稿した、国民民主党の減税案も興味深い。
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1715940704604893489?s=20
現在の議論に繋がる、基礎控除を増やすという内容だが、
>年収2400万円以上の所得層は引き上げの対象から外す方針です。
と、ハッキリ書いてある。
令和2年以後の基礎控除の所得制限の容認である
③国民民主は「低中所得者の負担を軽く、高額所得者の負担は重く」だった
国民民主党は「高額所得者の負担は重くていい、低所得者の負担を軽くすべし」という方針の党だった、少なくともこの時点では、そう解釈するのは妥当
またこの時点では、令和2年以後の基礎控除の所得制限を問題視し、その撤廃を継続的に訴えて来たような様子は無い
(3)2024年衆院選からの国民民主の「103万の壁騒動」
①「103万の壁を178万に」
国民民主党が、2024 年 10 月の第 50 回衆議院議員総選挙の際に「手取りを増やす」「103万の壁を178万に」というキャッチコピーを打ち出したところ、大好評
②具体的なことはわからず
「103万の壁を178万に」という言葉からは、想定できる内容が 3 種類
基礎控除の増額・・・これだと「高額所得者を優遇するような結果になる懸念がある」
給与所得控除の増額・・・フリーランスに比べて給与所得者を優遇する懸念があり、長年日本が取り組み続けてきた「高すぎる給与所得控除の是正」や、令和2年の「多様な働き方に対応した税制改正」と逆行する。
※https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b08_3.pdf
「扶養の要件の合計所得」の引き上げ・・・働き控え対策として、最短で効率の良い案
③「働き控え対策」として歓迎
当初は、この「103万の壁を178万に」案は「働き控えの解消に繋がる」という文脈で、歓迎する声が多かった
確かに、特定扶養の影響が大きい学生年代のアルバイトで生じていた働き控えの対策としては、良い案
しかし、歓迎の声の中には、配偶者特別控除の存在を知らず、103万の壁がいわゆる主婦パートにも関係していると思い込んでいる人や、働き控えの最も大きな壁となっている130万の壁も一緒に上がるのだと思い込んでいる人も少なくなかった
(なお、130万の社保3号の壁に関しては、国民民主党は「3号廃止」という、勇気のある、しかし厳しい提案をしていた)
④「本人の税金が減る案」
2024年10月22日(衆院選開票日は27日)
その頃、「国民民主に騙されるな」というタグが出回ったことを逆利用する形で玉木氏は「扶養ではなく、本人の手取りが増える案でした」という投稿をし、どれだけ減税効果があるか、という表を拡散
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1848715574622490992?s=20
⑤「高額所得者優遇」なのでは・・・?
この情報により、基礎控除か、又は+給与所得控除も併用し、ともかく所得控除と同じ計算でもって減税をする案だと考えられるように
以下のような批判も
「それだと高額所得者優遇政策になるのでないですか?」という批判
とてつもなく大規模な減税策になるのでは? 財源はどうするのか? という批判
その一方で、「私は高額所得者なので、高額所得者優遇は嬉しい」という声や「個人的なことはどうでもいいが、とてつもなく大規模な減税策になるので、経済対策として歓迎」という声も
さらには、「特に言及されているわけではないが、おそらく高額所得者優遇にはならないような何か策を加えるであろう、だから賛成」という人もいた
この時点ではまだ、具体的な細かい内容まで議論される段階ではなく、様々な解釈が可能だった
なお、玉木氏は、「高額所得者優遇になる」という批判に対して、2024年10月31日、こう反論
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1851647969571037475?s=20
>高所得者に有利なことは最初から分かっている。
>だからと言ってやらない理由にはならない。
>基礎控除額に現在のような所得階層ごとの差をつけるかどうかは議論すればよい。
これはどう見ても「既存の所得制限を撤廃しよう」ではなく「既存の所得制限はありき」
むしろ新しい基礎控除の増額案にも、階層ごとの差を付けることは、ある程度折り込み済みであるかのよう言い方にも思えるもの
(4)「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」の限界
①国民民主案は「基礎控除を上げること」で確定
選挙後、2024年11月17日、国民民主党(玉木氏)は、「103万の壁を178万に」というのは、「基礎控除を上げることだ」と、改めて明言
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1858130805773721732?s=20
②国民民主案に対する批判と、その反論(?)
国民民主の「基礎控除を上げる」案に対して、特に「7兆円程度の財源が必要」との報道があったことから、財源の観点から「無責任」「荒唐無稽」等の批判が多かった
当時の国民民主党は、この財源論の批判をかわすために、以下のような様々な詭弁を繰り返した。
財源の問題では無く、生存権の問題だ
税収の上振れ(支出の増加は度外視)
ブラケットクリープ(ブラケットクリープ対策なら変更すべきはブラケットそのものである矛盾)
諸外国の基礎的控除の数字との比較(物価差を無視)
働控え対策(根本的に異なる社保の壁による働き控えのデータを引用)等
③基礎控除なのに所得制限?!
ある時「与党側は、国民民主の要望を無視も出来ないため、国民民主の提案をある程度受け入れつつも基礎控除に所得制限をつけるのではないか」という報道がなされた
https://x.com/Sankei_news/status/1861366043656286684?s=20
この記事に対し、一般人の感想として「基礎控除に所得制限を付けるなんてとんでもない!」というものが非常に多かった
④「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」で押し通すことの無理
国民民主は、「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」という主張をよく行っていた
「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」というのは、確かに一つの正しい解釈ではある
しかし、絶対ではない
基礎控除は、生存権と関わる一要素ではあるかもしれないが、基礎控除が生存権の全てではない
基礎控除が生存権のためだけにあるわけでもない
基礎控除は生存権と同等のものという解釈から所得によらず全員に一定であるべきという考えがあり、一方で、生存権を実現するための方法の一つとして基礎控除があり、他で保障されているのであれば、基礎控除自体は必ずしも一定でなくても良いという考えもあり、どちらも間違いとは言えない。
事実として、令和2年以後、日本の所得税では既に基礎控除には制限があり、それを多くの人が受け入れ、これが違憲であるといった大きな論争は起きているとは言えない
収入がごくわずかしかない人には、基礎控除がいくら高くなっても生存権は担保されているとは言えない。
その場合は給付や生活保護のような仕組みこそが必要である
逆に収入が何千万もある人が、基礎控除をゼロにされても、それが生存を脅かすことになるとは、到底言えない
⑤「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」という案ではない
「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」という理論は、国民民主党の案との整合性が取れていない
もしも、基礎控除の所得制限を、憲法の生存権の精神に反するものだから一律にすべし、という考えがあるのであれば、「基礎控除の増加」ではなく「基礎控除の一律化」を優先していなければ、おかしい
「たとえ基礎控除を下げたとしても一律化へ」このような案であれば、「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」という論理は筋が通るが、国民民主党の案は、そうではなかった
⑥高額所得者(高税負担者)への希望
(4)④で述べた通り、「基礎控除は憲法の生存権なのだから全員一律であるべきだ」という理論を絶対不可侵の最優先事項として決めつけることには、無理がある
しかしもちろん、その考え方が間違いというわけではなく、説得力のある一面も持っている
国民民主が主張したこの論法は、令和2年以後の「基礎控除の所得制限」を受け、その税負担の増加に理不尽さを感じていた人たちへの光明と映った可能性がある
また、玉木氏による https://x.com/tamakiyuichiro/status/1858119341977596160?s=20
>非課税世帯への給付は否定しないけれど、
>まじめに働いて税金を払っている人たちのことをもっと大切にすべきではないか。
>国民民主党の主張する基礎控除の拡大は、すべての働く人の税負担を軽減する政策です。
>税金を払っていない人だけでなく、税金を払っている人こそ助けよう!
この投稿に象徴されるような論調は、高額所得者(高税負担者)にとっては、「いつもの低所得者ばかりへの恩恵ではなく、税負担が大きい我々への恩恵を言ってくれているのだ」「ようやく我々の立場に立ってくれる、私たちの気持ちをわかってくれる党が現れてくれた」という感情を増幅させる要素として十分であった
しかし、(2)で確認した経緯を重視すれば、国民民主党が「たとえ低中所得者の相対的負担は増えても、高額所得者の相対的負担が減らそう」そんな減税策を打ち出すと考えるのは、あまりにも無理があるように思える
(5)国民民主が提出した法案要綱は、所得制限前提のものだった
①2024年11月28日玉木氏が嬉しそうに投稿をしている https://x.com/tamakiyuichiro/status/1862009639120048161?s=20
>ついに、「103万円の壁」を引き上げる法案を、国民民主党単独で衆議院に提出できました。
>衆院選で、21議席以上を我が党に与えていただいたからこそ出来たことです。
>改めて全国でご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。実現に向け仲間と共に全力で取り組みます。
投稿に添付された国民民主党の所得税減税法案の要綱には、「基礎控除の既存の所得制限の撤廃」「基礎控除の一律増」などの文言は、一切無い
核心部分について書かれた文面はこう
<<基礎控除の最高控除額及び給与所得控除額の最低控除額の合計額を103万円から178万に引き上げること>>
この令和6年の時点で、基礎控除は0~48万、この最高控除額の48万と、給与所得控除は55万~195万、この最低額55万、48万+55万=103万の、いわゆる課税最低限と呼ばれる数字だけを引き上げようという案
これは明らかに、基礎控除に幅が存在することを容認し、それを前提としている案と言い切れる
②「ここまで変えてくるとは」
https://x.com/yamakushi_PP100/status/1862051165581807725?s=20
これまでの国民民主の非現実的な主張から、大幅に変えてきた。
この内容ならば、荒唐無稽だの高額所得者優遇だのと、文句を付けるには当たらない。
いわゆる課税最低限のラインを重視し、それより上の層には、給与所得控除の減額や基礎控除の段階的な所得制限を付ければ、十分に現実的な案である
てっきり、国民民主は現役世代・中間層を優遇したいのかと思っていたが、そうではなく、実は低所得層支援がしたかった
(6)基礎控除の所得制限を撤廃しての上乗せは事実上、不可能
①確かに、出来るわけがない国民民主の、これまでの主張と一転した、所得制限容認を隠さない案に驚くと同時に、しかし、納得もした
なぜなら、基礎控除の所得制限を撤廃しての上乗せなど、普通に考えて出来るわけがないからである。
②不可能な理由:高額所得者優遇のイメージが避けられない
令和2年以後、基礎控除が0~48万であった状態から、(※以下は所得税についてのみのイメージ)例えば基礎控除を一律38万に戻すと、「大半の納税者には5千~2万強の増税、高額納税者には最大17万程度の減税」になる
一律48万にするなら、「大半の納税者には減税効果なし、高額納税者に最大21万程度の減税」になる
所得制限を撤廃した上で、玉木氏が主張していた基礎控除一律123万にした場合は、「大半の納税者には3万~15万程度の減税、高額納税者に最大55万程度の減税」になる
たとえ「それは高額納税者が、元々重い税負担を負っていたからだ」という文脈があったとしても、この減税案を、多くの人が喜んで迎えるとは考えにくい
少なくとも、多くの有権者から票を得たい政党にとって、前向きに宣伝したい内容ではない。その証拠と言えるかどうかはわからないが、先ほども紹介した「国民民主案による減税額の目安」の図では、なぜか減税の最大額が22.8万(※住民税も含む))までしか書かれていない。
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1848715574622490992?s=20
もし、基礎控除の所得制限を撤廃して123万まで引き上げれば、最大で61万程度※住民税も含む))の減税額
減税額の大きさを誇るなら、この情報を積極的に出すべきであろうが、実際にはそうしていない
(それどころか、この図を見て「国民民主の減税案は最大でも22.8万だから高額所得者優遇ではないんだ」と考えていた支持者も実在した)
③不可能な理由:どうやっても段差はできる
国民民主案を支持する人の中には、令和2年以後の既存の所得制限は残して、基礎控除の上積み分だけでも一律にすればいい、と考える人も多い
しかし、それも実際に導入するのは不可能なのである。もし、そのイメージをそのまま制度化した場合、従前の基礎控除の差が0~48万だった部分が、0~123万と大きく広がる
基礎控除が制限されるラインの前後で、猛烈な手取り逆転現象が、壁が発生することになる
これはいかにも不公平感が高く、また、働き控えに類する動きを誘発し中立性を著しく損ねる
既存の所得制限を残しつつ上乗せするには、必ずどこかで段差を付けなければならない
それ以外の方法は、無い
その段差を、緩やかに広く取るか、一部の箇所に集中させるか、あるいは複雑化しても曲線を描くようにするか、そういった「段差の付け方等」の違いがあるだけで、すでに段差がある状態で、それを無視して他を段差はナシに…という形を無理なく作るのは不可能なのである
(※言うまでも無く、この案では既存の所得制限は残るため、「生存権だから一律に」理論とも矛盾する)
玉木氏が
>高所得者に有利なことは最初から分かっている。だからと言ってやらない理由にはならない。
>基礎控除額に現在のような所得階層ごとの差をつけるかどうかは議論すればよい。
と語った通りに、基礎控除の所得制限を撤廃しての上乗せなど、現実には不可能だとわかり切っており、現実的には、基礎控除に上げるのであれば、所得制限を付けなる方法以外にはあり得なかったのである
(7)与党案への国民民主からの批判
①三党合意
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1866746705183641773?s=20
>合意書
>自由民主党、公明党および国民民主党は、以下に合意する。
>一、 いわゆる「103万円の壁」は、国民民主党の主張する178万円をめざし、来年から引き上げる。
>令和6年12月11日
②令和6年12月に発表された税制大綱
例年12月に発表される閣議決定された税制大綱(この場合は令和7年の税制改正案)では、国民民主の要望の影響を強く受けたと思われる、下記のような内容があった。
学生年代の働き控え対策として、特定親族特別控除という、配偶者特別控除と同質の方式が採用された。
(※これは、学生バイトの働き控え対策として有効な、良い案であり(むろん、短所が無いわけではない)、国民民主は成果として大いに誇るべきと思う)
基礎控除の10万上乗せ(ただし、従前の所得制限対象の周辺には上乗せ無し)
給与所得控除の下限の10万上乗せ
この2点は、国民民主の主張の中でも「物価高に合わせて上げるのべきだ」という要素について、妥当性を認めたと考えられる
この案に対しては「たったそれだけしか上がらないのか」という落胆や批判の声が多かった
③令和7年2月の与党案
2025年(令和7年)2月中旬、②で税制大綱を出したにも関わらず、基礎控除に関して上乗せする提案が、与党側からあった(俗に言う公明案)
その内容は、基礎控除に時限的で段階的な上乗せをするというもので、基礎控除の最大+給与所得控除の下限、いわゆる課税最低限を160万とするものであった
178万には届かないものの、103万からは大きく上積みされ、(5)で紹介した国民民主の法案要綱の内容に沿う案であった
しかし、なぜか国民民主の議員は、示し合わせたかのようにこの与党案を猛攻撃した
④国民民主議員からの猛批判
玉木雄一郎衆議院議員
https://x.com/tamakiyuichiro/status/1891784930327396652?s=20
>物価高で困っているのは低所得者だけではありません。対象をもっと拡大すべきです。
>それと、内容が不十分なのに加えて、制度が複雑過ぎます。「103万円の壁」を引き上げようとして、
>所得制限という新たな「壁」を設けるのは避けるべきです。https://x.com/tamakiyuichiro/status/1894751062181187652?s=20
>【現役世代へのメリットを与党が削いだ】
>2020年度から初めて基礎控除に所得制限が導入され(2,400万円以上)、制度がいびつな形になったが、
>今回の「新与党案」で、さらに細かい所得制限が設けられ、“異形の姿“となった。将来に大きな禍根を残すだろう。
>850万円までの所得層に年間2万円程度の実質的な定額減税とするために、
>累進税率に応じて控除額を少なくしたため極めて複雑な仕組みとなり、
>税の「公平、中立、簡素」の原則に反している。『二重累進』と呼んでもいい内容だ。
>しかも、200万円以上の方については2年間の期間限定の減税。つまり、2年間で4万円程度の定額減税にとどまり、現役世代、とりわけ中間層以上のメリットが極めて薄いものになっている。
>これなら、岸田内閣の4万円の定額減税とさほど変わらない。私たちが目指した税制改正とは全くかけ離れた姿である。
>物価高騰に苦しむ国民を救うことも、働き控えを解消することもできない。岸田光広衆議院議員
https://x.com/KishidaMitsu/status/1891973902018203732?s=20
>日本の租税原則の、「公平・中立・簡素」の3原則に反しています。
>基礎控除に累進性を持たせ複雑化する。また新しい壁を作り、国民に分断を生む。
>基礎控除は、生存権に基づきすべての納税者に等しく与えられるべき。
>この提案には本当に驚いた。岡野純子衆議院議員
https://x.com/junko_okano/status/1891799078406902050?s=20
>税の三原則『公平・中立・簡素』の「簡素」はどこへ行った!?
>我々が「生存権だ」と言ったから「低所得層に配慮したから納得すべし」というメッセージなのでしょうか。
>“みんな揃って貧しくなる日本”を打破できる、やっと巡って来たチャンス。これでは全く納得いきません古川元久衆議院議員
https://ameblo.jp/furukawa-motohisa/entry-12887280170.html
>これに対して私たち国民民主党は「課税最低限に所得制限を設けることはおかしい」として、
>所得制限の撤廃を求め、現在、先方からの回答を待っています。
>税制は負担を求めるものである以上、理屈が重要で、その基本原則は「公平・中立・簡素」です。
>この基本原則に照らすと、まず「公平」かどうかですが、
>課税最低限は「最低生活にかかる費用には課税しない」という憲法25条の生存権に基づくものであるので、
>所得制限をかけるのは明らかに不公平です。
>また経済活動に「中立」かどうかですが、所得が200万円の前後で課税最低限が37万円も変わってくることとなると
>200万円が新たな壁となり、この壁を越えるかどうかで働き控えが起きる可能性があり、この点で中立とは言えません。
>さらに制度として「簡素」かどうかと言えば、所得制限を設けるのは間違いなく制度を複雑にします。
>つまり課税最低限に所得制限を設けるのは「公平・中立・簡素」と言う税制の基本原則に反するのです。
>私たちはこれからもこの税の基本原則を重視して交渉にあたりたいと思います。榛葉賀津也参議院議員
https://x.com/kokochan_1117/status/1892340889923547601?s=20
>103万円の壁を取り外そうとしてるのに
>新しい壁を作ってどうするんですか?
>所得制限をかけて「103万円の壁」を160万円に上げる自民案
>国民を分断する可能性があるため所得制限をかけず
>一律で積み増すべきと私も考えます!江原くみ子埼玉県議会議員
https://x.com/ekumikoyo/status/1891638135278198950?s=20
>待ちに待ってこんな提案なら、全く賛成できません。
>税の仕組みは分かりやすいことが鉄則なのに、こんな複雑にしてどうするのか
>低所得者への対応も必要だけど、いま、一番求められているのは、
>真面目に働いて納税している中間層の手取りを増やすことのはずです!平岩まさき衆議院議員
https://x.com/masaki_hiraiwa/status/1891787466836701607?s=20
>よくこんな案考えるよねと思う(ほめている訳ではありません)。ひちわ真理子 八千代市議会議員
https://x.com/mariko_hichiwa/status/1891645750385246416?s=20
>国民の希望まで奪うのか
>(個人的には寝言は寝ていえ、と言いたいです)
以上のように、彼らはとても強い言葉で批判を行った。この与党案は、先に述べた国民民主が提出した法案の要綱に反するものでは無く、むしろ国民民主案の趣旨を汲み取り、現実に具現化させた案だというのに
所得制限を撤廃しての上乗せなど、現実には不可能だと、わかっているはずなのに
この与党案は令和7年3月に国会で承認され、令和7年12月から施行、適用された
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDE0CA.htm
なお国民民主党はこの案に国会で反対している。
(8)「178万合意」そして「ミッションコンプリート」
①基礎控除には所得制限を設けるべきでないと一貫して主張してきた
令和8年2月10日現在、「こくみんファクト」のサイトには
https://election2026.new-kokumin.jp/kokumin-fact/detail/680/
>国民民主党は、生きるための最低限のコストには課税しないとの考え方で設けられている基礎控除には、
>所得制限を設けるべきでないと一貫して自民党に主張してきました
という文言が掲載されている。同様の立場を取る支持者も少なくない。
「一貫」とは果たしてなんなのか、厳しく問いただしたくもなるが、ともあれ、(7)の④では、「簡素であるべき」「壁で分断を生むな」「生存権」という立場を、国民民主は選択していた。
②「全部178万で年収850万まで引っ張る」
令和7年12月頃、新しい税制大綱が発表される前の、国民民主、榛葉氏による演説
https://x.com/yamakushi_PP100/status/1997300300001181839?s=20
中間層を強くしたいから、年収850万までは壁をなくしたい
基礎控除の所得制限撤廃、一律上乗せでは無く「所得制限をしてもいいから、ここまでは制限なしの中に入れてくれ」というその内容に、「国民民主党は基礎控除の所得制限を撤廃してくれるはずだ」と願っていた層からの急速な心離れが進行する
③「ミッションコンプリート」
令和7年12月18日いわゆる「178万合意」が結ばれ、令和7年改正で103万から160万に上がっていたいわゆる課税最低限が、国民民主が掲げていた178万まで上がることが決まった
また、時限的で段階的な基礎控除の特例上乗せ部分の対象が大きく広がった
この合意の内容は、令和6年から比べて
階段式で複雑
2020年度から初めて基礎控除に所得制限が導入され、さらにいびつになった“異形の姿“であり
実質的に岸田内閣の4万円の定額減税とそう変わらない減税効果で
『二重累進』と呼んでもい
新しい壁を作り、国民に分断を生み
生存権に基づきすべての納税者に等しく与えられるべきという考えに反し
103万円の壁に変わる新しい壁を作り
一律での積み増しではないが、
榛葉氏は「ミッションコンプリート」と口にし、涙したという。
(9)おわりに
①国民民主の不誠実極まりない詭弁
ここまでご覧いただけたのなら、「基礎控除の所得制限撤廃」について、国民民主党がその都度、都合よく立場や解釈を使い分けてきたのは明らかだと、おわかりいただけるだろう
②これから目指す・・・?
国民民主の支持者の中には、未だに党の詭弁を信じ、「今はまだ満点ではないが、これから目指していけばいい」と考えているという
しかし、所得税の累進性の仕組み、基礎控除の所得制限の意味についてご理解いただけたように、所得制限とは「ちょっとまだ行き届いていない人もいて、かわいそう」といったものではない
基礎控除が0~48万の差があったときに、一律38万か、一律48万か、一律58万か、あるいは一律ではないが少しでも差を縮めて20万~50万のように出来なかった、いや、そんな姿を目指しもしなかった党が、0~104万(※178万合意の内容)になった後に、一律化など出来ようはずがない
③どちらが正しいか?
どちらも正しいとは言えない「2割を取り残すのか」「裏切られた」と反発する人たち、「いや、『今後も所得制限の撤廃を求めていく』とちゃんと言ってくれている」「100点じゃなければ評価しないというのはおかしい」「今後に所得制限の撤廃が可能なのは国民民主党だけだ、党を大きくする必要がある」どちらが正しいのか?
国民民主の詭弁に騙され、国民民主が既存の所得制限を撤廃したり、一律の上乗せをが出来ると期待してしまったのは、気の毒だが、誤りであった
一方、「これから所得制限を目指し続ける」は論外
既に「基礎控除の逓減式の強化」という「高額所得者の負担を増やして低所得者の負担を軽くする」という道に進んだにも関わらず、これに逆行する所得制限の撤廃・一律化による「高額所得者の負担減と低中所得者の負担増」をやるわけがない
④給付付き税額控除
2026年(令和8年)2月、衆院選の真っただ中、国民民主は「社会保険料還付付き住民税控除」案を提示し、サクラ・拡散役の支持者もこれをしきりに宣伝した
https://x.com/adachiyasushi/status/2019063535595401709?s=20
この案は、簡単に言えば、給付を伴う税額控除
言うまでも無く「低所得者の負担を軽く、高額所得者の負担を重く」で、基礎控除の所得制限撤廃とは、真逆の方向
⑤国民民主党が許される可能性
山串氏の価値観において、国民民主がここから許される道は、これしかない
「ごめんなさい、本当は最初から高額所得者の所得制限を撤廃する気はなかった」
「103万の壁や所得制限撤廃のキャッチフレーズが独り歩きして…、いや、意図的に利用してました」
「本当は、主な支持者層である、年収500~1000万ぐらいのサラリーマンの税負担を軽くすることが目的でした」と認めて謝ること
しかし、おそらくそうする可能性は絶望的だろう。彼らは、一貫して基礎控除の所得制限撤廃を主張し続けてきたそうだから