遠読――〈世界文学システム〉への挑戦
フランコ・モレッティ(著) 秋草 俊一郎(翻訳) 今井 亮一(翻訳) 落合 一樹(翻訳) 高橋 知之(翻訳)
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少数の「正典」の「精読」で世界文学は語れるのか?膨大な数の小説をコンピュータ解析し進化論から文学史を論じる挑戦的比較文学論。
テクノロジーや流通の革命・発達により世界がネットワーク化する今日、ごく少数(世界で刊行される小説の1%にも満たない)の「正典(カノン)」を「精読」するだけで「世界文学」は説明できるのか?
西洋を中心とする文学研究/比較文学のディシプリンが通用しえない時代に、比較文学者モレッティが「文学史すべてに対する目の向けかたの変更を目指」して着手したのが、コンピューターを駆使して膨大なデータの解析を行い、文学史を自然科学や社会学の理論モデル(ダーウィンの進化論、ウォーラーステインの世界システム理論)から俯瞰的に分析する「遠読」の手法だ。
本書には、「遠読」の視座を提示し物議を醸した論文「世界文学への試論」はじめ「遠読」が世界文学にとりうるさまざまな分析法が展開する10の論文が収められている。グラフや地図、系統樹によって、世界文学の形式・プロット・文体の変容、タイトルの傾向や登場人物のネットワークが描出されてゆくのだ。
21世紀に入り、人文学においても、デジタル技術を用いて対象や事象をデータ化し、調査・分析・綜合を行う〈デジタル・ヒューマニティーズ〉の方法論が拓かれつつある。「遠読」もまた世界文学に新たな視界を開こうとする比較文学からの挑戦なのだ――「野心的になればなるほど距離は遠くなくてはならない」。
目次
近代ヨーロッパ文学――その地理的素描
世界文学への試論
文学の屠場
プラネット・ハリウッド
さらなる試論
進化、世界システム、世界文学(ヴェルトリテラトゥーア)
始まりの終わり――クリストファー・プレンダーガストへの応答
小説――歴史と理論
スタイル株式会社――七千タイトルの省察(1740年から1850年のイギリス小説)
ネットワーク理論、プロット分析
訳者あとがき
索引