IR組織はコストカッター?
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「IRの経済的効果」というと大げさですが、IR組織が設置され、活動することが組織にどのような経済的影響を与えるのかは、考えてみる価値があると思います。ここでは、一例として、組織全体にとってIRが稼働することで組織としてのコストは増えるのか削減されるのかを考えてみましょう。 まず、必要なコストです。IR担当部署を作るからという理由で新しい建物を建てたり、高額な実験器具を購入したりすることはないので、一般的には、スタートするときに必要なコストは人材、ハード、ソフトに関する費用です。ここでの問題は、どの程度システム化するのかによってコストが大きく異なることです。IR用のシステムなど導入せず、分析用のソフトとパソコンを購入する程度であればハードやソフトのコストは数十万円程度に収まりますが、本格的なIRシステムを開発して専用のDBも構築する場合には、数千万円の費用が必要になることもあります。しかし、どちらのケースでも、頻繁にシステムの改善をしない限りその後のランニングコストは少なく、(少なくとも4~5年は)ほとんど管理のための人件費だけになります。 一方、削減されるコストはもっぱら人件費です。IR担当部署のカバー範囲によりますが、例えば、学内でバラバラに行われていた各種調査が一元化されるだけでも、のべ労働時間は相当削減できます。私自身、IR担当部署ができることによって、何人月分の業務を削減することができるのかを試算したことがあります。その結果として、IR担当部署が設置されると、システム整備が必要な期間はコストがベネフィットを上回るのですが、その後、人件費削減の効果が出ると予測できました。
ここでは容易に算出できる(表面的な)コスト・ベネフィットを考えてみました。これらは主に、作業の効率化に着目した考察です。しかし、高等教育機関に対してIRがより深く寄与するのは、エビデンスベースの意思決定によって、思い込みや思いつきを避けられることによる利益です。この貢献を中心に、IR活動が新規にもたらす効果もあるはずです。それをシミュレートしたり、数値化したりするのは簡単ではないのですが、IRに関するメタ研究として検証してみたいと考えています。 https://gyazo.com/20c2e4b9391ebd4516d4c6f7628eab9f
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