IRデータを研究に使う前に-確認すべきポイント-
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一方、IRデータの多くは気軽に研究に使えるものではありません。したがって、研究で分析対象とするには乗り越えなければならないハードルがいくつかあります。その代表的なものは、以下のとおりです。
その1:規則・ルール上問題がないか
国や自治体の法律や条令はもちろん、組織の内規に違反しない使い方であるのか、正規の届け出を経て学内の倫理委員会の審査を経ているのかなどが第一段階のハードルです。学内にIR担当部署を設置する際に、データの取り扱い要綱や細則も一緒に決めてしまうのが効率的です。しかし、そこまで気が回っていなかったケースもあるでしょうから、できるだけ早めにIRデータを研究に使う手続きのためのルールを整備しましょう。グローバル化に伴って海外の法令に従わなければならないケースもあるので注意しましょう。具体的なデータの流れ(収集→分析→発表・投稿)を想定してみると確認や整備の必要なルールが分かってくるはずです。 その2:学生や教員から許諾を得ているか
個々のデータを収集するときに、条件を示して(研究に使うことも明示して)許しを得るべきであるという意味です。実は、いちいち許諾を取らずに、研究でも使われるということを知らせるだけでも法令上は問題ありませんし、情報を受け取った後から許諾を取ることも理論的には可能ですが、集める側がルールのうえで問題ないと判断しても、情報を提供する側は、どうしても「後出しじゃんけん」と受け取ってしまうので心証がよくありません。IR担当部署が許諾を取るための例文を作って、学内の各部署でデータを集めるときにそれを使うよう要請することで、データを使い易くしている大学もあります。
その3:データを適切に扱っているか
上記のようなルールが整っていて、手続き上問題なく、IRデータが使える状況になったとしても、使用する(使用した)データの管理もおろそかにできません。個人情報保護法が定めるレベルのデータ管理は当然で、それに加えてローデータ(生データ)を物理的にどのように秘匿するのか、デジタルデータを消去するのはどのような場合で、復元できなくする方法をどの程度講じるのか、データを匿名化する場合にはどのような方法で行うのかなど、細かい注意点まで決めて、データを処理する研究者の間で申し合わせておきましょう。 いずれにしても、IRデータは本来研究に使うために収集されているのではありません。少しでも研究で使う可能性があれば、関係者に対してためらわずにそのことを表明し、それを織り込んだデータ収集計画を立てるべきです。
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