IRのデータ提供と心理的障壁
カテゴリ:
hr.icon
IRの業務
Howard-McLaughlinの情報支援サイクル(図1)に則るとIRの業務は
「データを再構築・分析」した上で
執行部に「データを報告」することで
という一連の活動を繰り返すことです。
https://gyazo.com/56c6576371ea2653988f3c4c53b41b99
図1 Howard-McLaughlinの情報支援サイクル
McLaughlin, G. W. & Howard, R. D., ”People, Processes, and Managing Data(second edition)”, Association for Institutional Research, 2004.
構成員へのデータを用いた説明
学内で新しいものを導入する、不要なものを排除する、と言った決定をする際にIRの実務者はこのサイクルの順で業務を行い、大学の執行部はデータを元に決定します。 ところが、大学の構成員からは反発があることも多くあると思います。
これは構成員に対するデータを用いた説明が不足していることが1つの原因であるとも考えられます。
極端な例を挙げると、大学で指定の黒色ボールペンがあってこれを構成員が必ず使わなければならないとします。
これを執行部の判断で3色ボールペンを使うように指示があったとします。
これで構成員は納得して3色ボールペンに切り替えるでしょうか?
おそらく、切り替える理由がわからずに放置されるように思います。
ここで以下の情報を事前に構成員に開示したとします。
従来の黒色ボールペン:300円/本、耐久期間3ヶ月 → 4本/年 → 1,200円/年
新規の3色ボールペン:200円/本、耐久期間1年 → 1本/年 → 200円/年
この数値的根拠から経費が6分の1に抑えられるし3色使えるからという観点で構成員に対して比較的理解が得られるのではないでしょうか。
構成員の反対意見
ここまでの話はデータに興味を示して理解できる構成員に限られると思われます。
つまり従来の黒色ボールペンを使い続けたいという人が少なからず存在するということです。
理由は様々あると思いますが、以下のような感じかと思います。
使い慣れたボールペンを使いたい
何となくイヤ
当然長期的に見て経費が抑えられ、機能も高性能になるリプレースであることを前提にします。
ボールペンの場合と同様に以下のような意見が出るかと思います。
使い慣れたシステムを使いたい
何となくイヤ
「何となくイヤ」という人たちの気持ちは以下のような感じでしょうか。
また余計なことをしないといけないとか
今ある状況を変えたくない
と言った、心理的な障壁があると思われます。
このような人たちにデータで説明しても伝わらないのではないかと思われます。
心理的障壁を取り除くためにIRができること
IRの従事者は心理カウンセラーではないので、やはりデータで説明する必要があるかと思います。
上記の例では「新しくするとどのように良いか」という観点での説明にとどまっていました。
「新しくしないとどのように悪いのか」という観点での説明を足すと心理的障壁が少しは取り除くことができるではないかと思います。
昨今では「データが示しているから・・・」とか「データに基づくと・・・」のような説明が苦痛でデータハラスメントという言葉があると聞いています。 近い将来「AIが決めたので」とか言うとんでもない言葉も出てくる恐れもあります。 IRの従事者としては心理的障害を取り除くようなデータでの説明を心得つつ、意思決定はあくまでも執行部等の人間が判断することであることも心得ておくべきかと思います。
余談
目が口ほどに物を言う日本人はマスクをつけることに抵抗がありませんが、サングラスをかけた人を怖いと思ってしまいます。
口で相手の気持ちを察する国の方はマスクをつけることに抵抗があり、サングラスには抵抗がありません。
感染症が蔓延している状況においては密な状況を作ると危険だから人が集まる状況を作るのは自粛しましょうと言っても人は集まります。
極端な話、逆に絶対に自宅で食事をしてはならないような風潮になったとしても自宅で食事をする人はいます。
人それぞれの当たり前や常識があると言うことを念頭に置いて新しいものを導入しないといけませんが、IRの従事者は多く人とが納得ができる客観的なデータを提供するように心がけるべきかと思います。
※当コラムの文責及び著作権は、すべて投稿者に帰属します。