能「松風」
https://www.youtube.com/watch?v=30-kp9UJBTI
https://www.youtube.com/watch?v=F7KW11yFxok
ダイジェストになっている?
僧の登場場面がない
常用漢字になおしている
シテ:松風
ツレ:村雨
ワキ:僧
ワキ詞「是は諸国一見の僧にて候。我いまだ西国を見ず候程に、此度思ひ立ち西国行脚と志して候。あら嬉しや、急ぎ候程に、是ははや津の国須磨の浦とかや申し候。又是なる磯辺を見れば、様ありげなる松の候。如何さま謂のなき事は候まじ、此あたりの人に尋ねばやと思ひ候。 狂言しかじか
地元の人に聞いているらしい
僧、松風と村雨ゆかりの松を尋ねる
謡「さては此松は、いにしへ松風村雨とて、二人の海士の旧跡かや。痛はしや其身は土中に埋もれぬれども、名は残る世のしるしとて、変らぬ色の松一木、緑の秋を残すことのあはれさよ。
松風と村雨の逸話
かつて行平に愛された海女の姉妹が亡霊となって旅の僧の前にあらわれ,行平形見の狩衣を身につけて舞う。能「松風」,御伽草子「松風村雨」,人形浄瑠璃「松風村雨束帯鑑」などは松風物といわれる。〈日本人名大辞典〉 松と緑の秋とはどのような関係があるのかしら
古歌をたどりたい
身は土中、名は残るは白居易の詩からきている
長恨歌か?
和漢朗詠集にあるかな
詞「かやうに経念仏して弔ひ候へば、実(げ)に秋の日のならひとて程なう暮れて候。あの山本の里までは程遠く候程に、是なる海士の「に立ち寄り、一夜を明かさばやと思ひ候。 2人の海士(シテ・ツレ)登場
シテ、ツレ一声謡「汐汲車わづかなる、うき世に廻るはかなさよ。 汐汲車とは?
橋掛りから徐々に舞台中央に歩む
ツレ謡「波ここもとや須磨の浦、月さへ濡らす袂かな。 シテ、サシ謡「心づくしの秋風に、海はすこし遠けれども、彼の行平の中納言、関吹き越ゆるとながめ給ふ、浦わの波の夜々は、実に音近き海士の家、里離れなる通路の、月より外は友もなし。 シテ謡「実にや浮世の業ながら、殊につたなき海士小舟の、
シテ、ツレ謡「渡りかねたる夢の世に、住むとや云はんうたかたの、汐汲車よるべなき、身は海士人の袖ともに、思ひを乾さぬ心かな。 地謡「かくばかり経がたく見ゆる世の中に、うらやましくも澄む月の、出汐をいざや汲まうよ。出汐をいざや汲まうよ。 (上歌)影はづかしき我姿、影はづかしき我姿、忍び車を引く汐の、跡に残れる溜水、いつまですみは果つべき。野中の草の露ならば、日影に消えも失すべきに、是は磯辺に寄藻かく、海士の捨草いたづらに、朽ち増さり行く袂かな。朽ち増さり行く袂かな。 シテ、サシ謡「面白や馴れても須磨の夕ま暮、海士の呼び声幽(かすか)にて、
シテ、ツレ謡「沖にちひさき漁舟の、影幽なる月の顔、雁の姿や友千鳥、野分汐風いづれも実に、かかる所の秋なりけり。あら心すごの夜すがらやな。
シテ謡「いざいざ汐を汲まんとて、汀(みぎは)に満干の汐衣の、 ツレ謡「袖を結んで肩に掛け、
シテ謡「汐汲む為とは思へども、
ツレ謡「よしそれとても、
シテ謡「女車、
上歌地謡「寄せては帰る潟をなみ 寄せては帰る潟をなみ、葦辺の田鶴こそは立さわげ、四方の嵐も音添へて、夜寒何と過ごさん。更け行く月こそさやかなれ。汲むは影なれや。焼く塩煙心せよ。さのみなど海士人の、憂き秋のみを過さん。松島や小島の海士の月にだに、影を汲むこそ心あれ、影を汲むこそ心あれ。 地謡「それは鳴海潟、ここは鳴尾の松陰に、月こそさはれ蘆の屋、
シテ謡「灘の汐汲む憂き身ぞと、人にや誰も黄楊の櫛、
地謡「さしくる汐を汲み分けて、見れば月こそ桶にあれ。
シテ謡「是にも月の入りたるや、
地謡「うれしや是も月あり。
シテ謡「月は一つ、
地謡「影は二つ満つ汐の、夜の車に月を載せて、憂しともおもはぬ汐路かなや。
ワキ詞「塩屋の主の帰りて候。宿を借らばやと思ひ候。如何に是なる塩屋の内へ案内申し候。
ツレ詞「誰にて渡り候ぞ。
ワキ詞「是は諸国一見の僧にて候。一夜の宿を御貸し候へ。
ツレ詞「暫く御待ち候へ、主に其由申し候べし。如何に申し候、旅人の御入り候が、一夜の御宿と仰せ候。
シテ詞「余りに見苦しき塩屋にて候程に、御宿は叶ふまじきと申し候へ。
ツレ詞「主に其由申して候べば、塩屋の内見苦しく候程に、御宿は叶ふまじき由仰せ候。
ワキ詞「いやいや見苦しきは苦しからず候。出家の事にて候へば、平に一夜を明かさせて給はり候へと重ねて御申し候へ。
ツレ詞「いや叶ひ候まじ。
シテ詞「暫く。(謡)月の夜影に見れば世を捨て人、よしよしかかる海士の家、松の木柱に竹の垣、夜寒さこそと思へども、蘆火にあたりて、御泊りあれと申し候へ。
ツレ詞「此方へ御入り候へ。
ワキ詞「あらうれしやさらばかう参らうずるにて候。
シテ詞「始めより御宿参らせたくは候ひつれども、余りに見苦しく候程に。さて否と申して候。
ワキ詞「御志有難う候。出家と申し旅といひ、泊りはつべき身ならねば、何(いづ)くを宿と定むべき。其上須磨の浦に心あらん人は、わざともわびてこそ住むべけれ。
謡 藻塩たれつつわぶと答へよと、行平も詠じ給ひしとなり。又あの磯辺に一木の松の候を、人に尋ねて候へば、松風村雨二人の海士の旧跡とかや申し候程に、逆縁ながら弔ひてこそ通り候ひつれ。あら不思議や、松風村雨の事を申して候へば、二人共に御愁傷候。是は何と申したる事にて候ぞ。
シテ、ツレ謡「実にや思ひ内にあれば、色外に顕れさむらふぞや。わくらには問ふ人あらばの御物語、余りになつかしう候ひて 猶執心の閻浮の涙、再び袖を濡らしさむらふ。 ワキ詞「なほ執心の閻浮の涙とは、今は此世の亡き人の詞なり。又わくらはの歌のなつかしいなどと承り候。かたがた不審に候へば、二人ともに名を御名のり候へ。
シテ、ツレ謡「恥かしや申さんとすればわくらはに、言問ふ人もなき跡の、世にしほじみてこりずまの、恨めしかりける心かな。(クドキ)此上は何をかさのみ包むべき。是は過ぎつる夕暮に、あの松陰の苔の下、亡き跡とはれ参らせつる、松風村雨二人の女の、幽霊是まで来りたり。さても行平三年が程、御つれづれの御船遊び、月に心は須磨の浦、夜汐を運ぶ海士少女に、おとどひ選ばれ参らせつつ、折にふれたる名なれやとて、松風村雨と召されしより、月にも馴るる須磨の海士の、 シテ謡「塩焼衣色替へて、
シテ・ツレ謡「緑の衣の空焼なり。
シテ謡「かくて三年も過ぎ行けば、行平都に上りたまひ、
ツレ謡「幾程なくて世を早う、去り給ひぬと聞きしより、
シテ謡「あら恋しやさるにても、又いつの世の音信を、
地謡「松風も村雨も、袖のみ濡れてよしなやな。身にも及ばぬ恋をさへ、須磨の余りに罪深し、跡弔ひて給び給へ。
上歌地謡「恋草の露も思ひも乱れつつ、露も思ひも乱れつつ、心狂気に馴衣の、巳の日の祓や木綿四手の神の助けも波の上、あはれに消えし憂き身なり。(クセ)あはれ古へを、思ひ出づればなつかしや、行平の中納言 三年はここに須磨の浦、都へ上り給ひしが、此程の形見とて、御立烏帽子狩衣を、遺し置き給へども、是を見る度に、弥増の思ひ草、葉末に結ぶ露の間も、忘らればこそあぢきなや。形見こそ、今はあだなれ是なくは、忘るる隙も有りなんと、詠みしも理や、なほ思ひこそは深けれ、
シテ謡「宵々に、ぬぎて我寝る狩衣、
地謡「かけてぞ頼む同じ世に、住むかひあらばこそ、忘れ形見もよしなしと、捨てても置かれず、取れば面影に立ち増り、起臥わかで枕より、跡より恋の責め来れば、せんかた涙に、伏し沈むことぞ悲しき。
着物を持って移動する
伏し沈むことぞ悲しきの場面でしゃがんでいる
シテ謡「三瀬河、絶えぬ涙の憂き瀬にも、乱るる恋の淵はありけり。あらうれしやあれに行平の御立有るが 松風と召されさむらふぞや。いで参らう。
ツレ謡「あさましや其御心故にこそ、執心の罪にも沈み給へ。娑婆にての妄執をなほ、忘れ給はぬぞや。あれは松にてこそ候へ。行平は御入もさむらはぬものを。 シテ謡「うたての人の言事や。あの松こそは行平よ。(謡)たとひ暫しは別るるとも、松とし聞かば帰りこんと、連ね給ひし言の葉は如何に、
ツレ謡「実になう忘れてさむらふぞや。たとひ暫しは別るるとも、待たば来んとの言の葉を、
シテ謡「こなたは忘れず松風の、立ち帰りこん御音信、
ツレ謡「終にも聞かば村雨の、袖しばしこそぬるるとも、
シテ謡「まつに変らで帰りこば、
ツレ謡「あら頼もしの、
シテ謡「御歌や。
ここいよいよ盛り上がるところ
シテ謡「いなばの山の峰に生ふる、松とし聞かば今帰りこん。それは稲葉の遠山松、
地謡「是はなつかし君ここに、須磨の浦わの松の行平、立ち帰りこば我も木陰に、いざ立ち寄りて磯馴松の、なつかしや。松に吹き来る風も狂じて、須磨の高波はけしき夜すがら、妄執の夢に見みゆるなり。我跡弔ひて給び給へ。暇申して帰る波の音の、須磨の浦かけて、吹くや後の山おろし、関路の鳥も声々に、夢も跡なく夜も明けて、村雨と聞きしも今朝見れば、松風ばかりや残るらん、松風ばかりや残るらん。
了