夢阿満
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阿満の亡せしより来夜眠られず、偶ま眠るも夢に遇ふて涕連々たり、
身長は去夏三尺余り、歯立ちて今春七年ばかりなり、
事に従って人子の道を知らんと請ひ、書を読み暗誦す帝京篇、 爾後神を怨み兼て仏を恨む、当初は地も無く又天も無し、
吾が両膝を看て多く嘲弄せり、汝の同胞を悼むに共葬すること鮮なし、
なんぞ堪へん小妹の名を呼びて覓むるに、忍び難し阿嬢の性を滅して憐れむを、 始は謂へり微微として腸暫く続くと、何に因りてか急急痛きこと煎るが如し、
毎に言笑を思ひて在るが如しと雖も、希に見る起居惣べて惘然たり、
到る処に須く彌百億に迷ひ、生時の世界三千より暗し、
南無観自在菩薩、吾が児を擁護して大蓮に座せしめよ。