僕を好きにしてええよ
静は床にバスローブを落とすと、熱っぽいまなざしで僕を見た。
「遥、花火を何回見れるか一緒に数えようって言うてくれた」
静は恥ずかしそうに微笑んで、ほう言うた。
「うん」
僕はうなずいた。
ルームランプの柔らかな明かりが、静の白い肌を照らしとった。
静はきれいやった。
「僕いつも遥に何かしてもらってばっかりや」
申し訳なさそうに、目を伏せる静。
「ほんなことないよ」
僕は静の肩に触れた。
「静は僕を幸せにしてくれてるやん」
静の肩をさすりながら、僕は言うた。
そばにおってくれるだけで、僕は幸せや。
それ以上、何を望むっていうんよ。
「僕を好きにしてええよ」
静は僕の鎖骨を指でなぞりながら言うた。
吐息は熱く、目はかすかに潤んどった。
「ホンマにええの?」
静の肩を触る手に、少しだけ力が入る。
「ええよ、なんでもいうこときくよ、なんでもするよ」
静の指先は微かに震えとった。
「わかった」
僕はうなずいた。
静の視線は不安げに、小刻みに動いとった。
「静」
僕は静を抱きしめて髪をなでた。
ふわふわの髪。静の匂い。
静にしたいこと、いっぱいあるよ。
してほしいことも、いっぱいあるよ。
「好きにしてええんな?」
「うん」
「ほな、静のこと世界で一番大切にさせてもらう」
ほれが静に一番したいこと。
「なんでもいうこときくんな?」
「うん」
「ほな、黙って僕に何でもしてもうとき」
「うん」
静は小さな声で返事をした。
ええ子やな、静。
「なんでもするんな?」
「うん」
「ほな、自分を大切にせえ」
ほれが静に一番してほしいこと。
僕の言葉に、静は何も言わんとうなずいた。
静は肩を震わせて泣いとった。
僕は静の髪を指でとかした。
静はホンマによう泣く。子供みたいに泣く。
僕はほんな静が愛しくてたまらんかった。