今までで一番幸せな誕生日や
今日は円の誕生日。今年は家族水入らず、三人で祝う誕生日。 どこか出かけたいところはないかと訊くと、家が一番安心すると言われてしもた。
欲しいもんはないかと訊くと、欲しいもんはもう全部持っとうと言われてしもた。
ほな何か食べたいもんはないか、ごちそうにしようと言うたら、お星さまのカレーが食べたいとリクエストされた。 僕はいつもみたいに、星形にくりぬいたにんじんの入った甘口のカレーを作った。 円もいつもみたいに、にんじんをスプーンですくって僕に見せて、楽しそうに食べた。
円はなんもいらんと言うたけど、僕は円へのプレゼントを用意してあった。 紙包みを渡すと、円は嬉しそうにリボンをほどいた。
それから中身を広げて、恥ずかしそうに頬を赤らめた。
白地にいちご柄の、ゆったりしたシルエットのワンピース。
「着せてくれる?」
いつもやったら恥ずかしがってなかなか着てくれん円がほう言うたけん、僕は嬉しいなってその場で服を着替えさせた。
僕の見立て通り、ワンピースは円にぴったりやった。
「似合う?」
円は上目遣いに僕を見ながら、小さな声で遠慮がちに言うた。
「似合うよ、円のためにあつらえたみたいや」
赤いいちごがまた、色白な円によう似合とった。
円は恥ずかしそうに、ほなけど嬉しそうに笑うた。ほんな風に笑うてくれたら、がんばって買うたかいがあるよ。
僕達は並んで写真を撮った。
僕と、円と、円のお腹の赤ちゃんの、三人一緒の家族写真。
僕も円も穏やかな顔をしとった。きっと、赤ちゃんも僕達と同じ顔をしとったと思う。
円の言葉に僕はうなずいた。
「来年の誕生日も、その次の誕生日も、ずっとずっと一緒に祝おうな」
僕はほう言うて円の頭をなでた。
「約束するよ」
差し出された円の長い小指に、自分の小指を絡ませて、僕はもう一度大きくうなずいた。