世界で一番大切な、僕だけの円
朝、円が弁当に持っていきと言うておにぎりを握ってくれた。 スカーフに包んだおにぎりを差し出す円は、見たことないような優しい顔をしとった。
円が握ってくれたおにぎり、みんなに自慢したかった。僕の大切な人が、僕のために作ってくれたんやぞって。
酸っぱくて大きな梅干しが入ったおにぎり、今まで食べた中で一番のごちそうやった。
夕方帰ると、円は玄関で僕を待っとった。
僕は鞄を放り出して円を抱きしめた。
円は寂しかったと言うて泣いた。僕も寂しかった。一日中円のことだけ考えよった。
「おにぎりおいしかったよ、また作ってよ」
「毎日作るよ」
涙で濡れた目で僕を見つめて、円はほう答えた。
円、こんな優しい顔をしとったんやな、知らんかった。
円は甘口が好きやった。
にんじんを星の形にくり抜くと、円はそれをスプーンですくって嬉しそうに僕に見せた。
僕だけが知っとる、子供っぽくてかわいい円。
円は毎日僕を喜ばせてくれた。今日はお菓子の空き箱いっぱいに、赤い折り紙でバラの花を折ってくれた。
ほんな円がいじらしいて仕方なくて、僕は泣いた。円は僕の頭を優しくなでてくれた。
夜、僕が求めると円は何でもさせてくれたし、何でもしてくれた。
胸元と袖にリボンのついた白いワンピースを着せると、円は恥ずかしそうにうつむいた。
楽しみにしとった真っ白なタキシードを着た円は、カッコようて、きれいやった。
僕達は小さなダイヤモンドの埋め込まれたプラチナの指輪を交換して、神様の前で永遠の愛を誓った。 「遥、ありがとう。僕を選んでくれて」
円はほう言うて泣いた。
円は恥ずかしがってうつむいてしもたけど、すごくきれいでかわいかった。
世界で一番愛しい、僕の花嫁。世界で一番大切な、僕だけの円。