水中の哲学者たち
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発行 2021/09/28
装丁
永井玲衣さんのエッセイ。ざっくり言えば哲学とは…という話なんだけど、堅苦しくなく、日常ふっと思い浮かんでは消えていくような問いにそれはあるという事が述べられていて面白かった。美容院のくだりとか。
哲学も刺激も、日常や社会生活とは無縁なもののように思える。だが、わたしはあえて言いたい。哲学的で、刺激的な空間は、実は日常の中にこそある。あふれかえっていると言ってもいい。その中のひとつに「美容院」がある。
まず「どうしたいですか?」という問いが哲学的である。
(…)
「どうしたいですか?」という問いは、「どういうあなたでありたいですか?」という問いでもあり、「どういう人生をあなたは送りますか?」という問いでもある。問いはどんどん広がっていき、美容師さんの何気ない質問が「いかに生きるのか?」という根本的な問いにつながっていってしまう。
(…)
隣の美容師さんは、ふむふむと聞いたあと「この髪質だとこうするのもオススメですよ」などとお客さんと対話を始めた。2人は対話を繰り返し、考えや主張を洗練させ、心理に向かって探求を始めている。美容師さんはわたしのあり方をともに考えてくれる探究者なのだ。
哲学だ。哲学が起きている。
(永井玲衣『水中の哲学者たち』 p158~159)
また、まず人と人はわかり合えないものなのだっていう前提に立ちながら、他者の言葉に耳を傾けて向き合っていこうという姿勢についても語られており、どこか違国日記のフィーリングと近い気がして、このあたりが今しっくりくる感覚なのだろうなと思う。
実際わかり合えるはずだとするよりも自分自身落ち着く。