機動戦士Vガンダム
『ジークアクス』とか『水星の魔女』とか近々で話題のものがいくつかある中、唐突に『Vガンダム』を今観るべきという気がしたので、U-NEXT で一気に鑑賞。
ガンダムシリーズの中でもウッソが特に若い(幼い)主人公であることや、序盤のヨーロッパの森を舞台にした絵柄の雰囲気などから、どこか世界名作劇場のような牧歌的なイメージ(名作劇場も別に牧歌的な話ではない、みたいな話もありそうだけどそれは置いといて…)が先入観としてあった今作。
しかし、富野作品の例に漏れず序盤から戦争で人はガンガン死ぬ上、そんな牧歌的なイメージに違和感のない、これまた優しそうな年寄り連中が何の葛藤もなくウッソを戦力として扱おうとする様は、ちょっと不気味というか異常な趣きで、「これが残酷さで名高い所以…」と思わされる展開が最初から続く。ウッソがメンタルやられないからギリ成立してる。
また、シリーズの中でも、Vは特に女性の存在について言及されることが多い印象があったので、少しそういうモードでも観てしまう。
実際、ウッソという純粋無垢な少年を取り巻く形で登場する様々な女性キャラクター達は、男性以上に印象に残る魅力があり、またそれぞれに複雑さや危うさが描かれていて、「女のガンダム」みたいに言われるのもある程度の納得感はあった。
とは言っても、別に今っぽいジェンダー観で能動的に活躍する女性が描かれているとか、そういった印象は薄く、物語を通してウッソが無垢さをキープした少年のままでいることもあって、女性キャラの側がウッソを将来的な恋愛対象としての可能性はちらつかせたとしても、最終的には母性の担い手としての女性みたいなポジションに収まりがち、言い方を変えればありとあらゆる女性がウッソをめぐって母性を発揮しようとしてくるな、みたいな印象の方が強い。そういう意味で女が軸の物語ってことなのかも。
女性の主体性が消されているということでもないんだけど、結局みんなウッソを庇護する母や姉として動いている。
そんな中、ザンスカールのルぺ・シノやカテジナあたりは、なぜかつまらない男との関係を最後まで保持し続けはするのだが、ウッソに対しては敵だから当然庇護なんてしないのだけど、もっと露悪的ににウッソを自分のものにするとか、逆に拒絶したりする役割というか余地を与えられているのが良かったなと思う。 ただ、そんなそのザンスカールの女性キャラクターも最終的には「ザ・狂気」みたいなふるまいをする方向へ急速に収束していったのは、テレビアニメのフックとしては面白いから多分その方が正解なんだろうけど、ウッソという無垢な少年の圧倒的な正しさの為に狂わされたようとも言える気がしてちょっとかわいそうだし、作品のリアリティという点でももったいなかったように感じてしまう。
ストーリーのことも触れておくと、主人公が51話もかけて打倒しにいく、ザンスカール帝国の目指してるものというのがなんだかよくわからなかったな…というのが正直なところ。で、そこの骨格の弱さが上に述べたようなカテジナをはじめとする狂ってしまった女性、みたいなキャッチーなモチーフに最後は頼らざるを得なかった要因のように感じている。
もちろん国家としての、地球の環境回復と女性優位で争いのない社会みたいなお題目から、エンジェルハイロゥを使ってうんたらかんたらしてやるぜってなってるのはわかるのだけど、マリアは当然のことながら黒幕であるはずのカガチに至っても、そんな残虐な手段を使ってまで、理想を実現するのに暴走しているみたいな風には全然見えないんである。 なまじ争いのない世界的な理想を中心に置いたせいで全体的に生ぬるいというか。彼らが消そうとしてる存在も、地球連邦とかリガミリティアみたいな軍組織としてはあるものの、排除しようとしているものに人種とか宗教によるラベリングも特にないので、なんかフワッとしてるというか。
カガチ以外にもザンスカールの男性将校はどいつもこいつも、野心も理想も残酷さも優しさも、ついでに言えばビジュアルもシンプルに中途半端だったのが、物語としてよくなかったように思う。もしかするとあえて男性のつまらなさをつまらない男性としてそのままキャラクターにしたのかもしれないけども、ただ単につまんない人たちでしかなかった。
少なくともクロノクルはもっとキャラとして立っていなければいけなかったはずなのに、なんなら一番中途半端で、最後の最後までなんだか主体的にやりたいことも特に表現しない人間のままだったのはなんだったのか。取るに足らない男であるならその程度の存在として、もっとカテジナに利用されるなり操られるなりしても良かっただろうに、最後まであいつが物語の中心にい続けたことは本当に納得がいってない。 そこまでダメな方にも振り切れなかったのは、男性のしょうもなさを見せるという役割をピピニーデンあたりが請け負ってしまってたせいみたいな作劇上の都合なんかもありそうで、物語におけるキャラクターの配置って難しいのだなと思わされる。
…などなど語りたくなるポイントはたくさんあってキリがなく、もっと出来たのではと思ってしまうシリーズだったけども、面白かったです。なんて、文句ばっかりつらつらつらつら並べて最後にひとこと「なんだかんだで面白かった」で締めるどうしようもない感想の述べ方ばかりしていて本当に良くない。
作画の面でも時々旧 GAINAX のスタッフだとか村瀬修功さんといった名前がクレジットに並ぶエピソードもあってそういう回は眼福だった。