書きあぐねている人のための小説入門
https://gyazo.com/2b752c68bc870d56c1469d172f454d5f
table:
刊行 2008/11/25
去年アフター6ジャンクションでトリプルファイヤーの吉田靖直さんが推薦図書として挙げていたのと、筆者の保坂和志の本が某さんの仕事場に行くとやたらと沢山あったのが気になっていたので、まずはここからという気持ちで。
小説入門とうたってはいるのだけど、文法上のテクニックとか小説の具体的な書き方についてのハウツー本ではなく、小説をはじめ他のあらゆる表現に触れる際の心構えのようなものについてひたすら実践的なことが書かれており、ものの見方についての新しい角度が言語化されていてちょっと脳が開くみたいな感覚を覚える。本当にとてもためになった。
またストーリーについて書かれた章では、クオリティの高い映像作品などを配信などでよりどりみどり沢山観る事のできる今の環境下でそれらを次から次に消費することについて、自分が時おり感じる虚しさや疑問についての答えのようなものがあったような気がする。
自分もそうだけど、別に具体的に小説を書くことを志していない人も触れるべき内容なんじゃないかと思う。
私たちは、“私” “人間” “世界” というものを誰も見たことがない。
私はたしかに今ここにいるけれど、それは"私"ではない。いろいろな経験をして、 いろいろな記憶を持ち、いろいろな趣味があり、いろいろな予定や希望を持っている"私"は、今ここにいる私という姿だけではわからない。つまり、私自身を含めて、誰も見たことがない。
“人間"だって"世界"だってそうだ。 人は誰も “私” “人間” “世界” を外側から見たことがない。“愛"や"自由"も当然そうだ。どれも誰も見たことがない。
世間では物事をモデル化(簡略化)して語ることができる人を「頭がいい」というけれど、そんなものはたいした頭のよさではない。 また、会社などではフローチャートに した企画書を書ける人を「頭がいい」としているけれど、それも当然たいしたことではない。大事なのは、誰も見たことがないということを知ることだ。(p64)