斬る
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公開 : 1962年
配給 : 大映
上映時間 : 72分
小諸藩でぼんやり暮らす市川雷蔵演ずる高倉信吾は「なんとなく」の思いつきで武者修行に出て、3年後何事もなかったかのように実家へ戻ってくる。そんな折、水戸藩から来た腕の立つ剣客庄司嘉兵衛と立ち会う事を藩主に求められると、旅の途中で考えついたという三絃の構えで嘉兵衛を圧倒してしまう。しかしその事によって、もとより藩主に気に掛けられていた信吾に対する嫉妬をこじらせた隣に住む池辺義一郎の親子による逆恨みから育ての親である父と妹を殺されてしまう。そんな父の死の間際に自分の出生の秘密と実母の死に様を知らされた信吾は、平和な生活から一転、藩を出て孤独な剣客として生きていく事になって…みたいな物語。
物語と言ってもあって無いようなものというか、普通ならあらすじ上、まず盛り上げどころになるであろう池辺親子に対する復讐も速攻で行われる済まされるし、物語を推進させる主人公信吾の感情的な起伏は中盤以降はほとんど無く、クライマックスに至るまで異常にあっさりしていて、今のエンターテイメントに慣らされた感覚からすれば、素直に面白いかと言われると難しい感じではあった。
ただ逆に物語的なの肉付けが極薄なことで、キメ過ぎなくらいバキバキの構図とカメラワークによる情緒と緊張感がずっと高いところに保たれていて格好良く、そうした緊張感のある画面構成の中、立ち会いで対峙する相手が信吾に気圧されて踏み込むに踏み込めないようなジリジリした状態にこそ一番ドラマを感じる。
それは現実のMMAなどでも際にコンタクトが発生するまでの間や角度の取り合いにこそ勝負があるというのと似ているな、とか考えるとめちゃくちゃソリッドなアクション映画なんじゃないかという気がする。