ぼくが生きてる、ふたつの世界
https://www.youtube.com/watch?v=rEtUKCaTUHQ
table:
公開 2024.9.20
上映時間 105分
ろうの両親とその間に生まれたコーダの主人公の成長を描いた、呉美保監督の9年ぶりの作品。
『そこのみにて光輝く』はとても良かった記憶があるので、期待して観に行ったらめちゃくちゃに泣かされてしまった。いや、障害をモチーフにした映画で泣いたなんて24時間テレビに感動してるのと大差ないようでいちいち書きたくはないのだけど、障害者である事を超えて母親として主人公を見守るあんな眼差しを見せられたら、少なくとも自分にとっては泣くなというのが難しい。
身も蓋もない言い方をしてしまえば「普遍的な親子の絆の話」ではあるんだけど、その為に障害の問題を矮小化したり舞台装置にしてしまうような事態に陥っていないのが素晴らしいと思う。ろうの人達が直面する苦労について扱ってはいても、その暮らしの中にあるネガティブな側面ばかりを取り上げて、ことさらつらい普通ではない人生として描くのでなく、どの人もこれも人生だからという風に障害と付き合って生きていこうとするようなポジティブな暮らしぶりを映していたからなんだろう。
主演の五十嵐大を演じていた吉沢亮さんは、おぼこい中学生からボンクラな20歳頃を経てまともな大人になる30歳くらいまで演じ分けていてそれもすごかった。同様に母親の明子を演じた忍足亜希子さんも同じ女性を長いスパンで演じて分けており、各時代ごとの髪や服装のスタイルの微妙な変化の重ね方がとても細かったのもやはりすごいのだけど、それがクライマックスのあるシーンでめちゃくちゃ活きる事になるのがとてもやばかった。