だから私は推しました
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table:
演出
脚本
放送局 NHK
放映期間
エピソード数
『I's』を観てそのヤバさに触れてしまった自分のような人間にとっては待望の白石聖さんが主演のドラマ。それも春に『腐女子、うっかりゲイに告る。』をやっていたNHKのよるドラという信頼できそうな枠でと来たら観る他ない。ただし題材が地下アイドルと言われてしまうと、きつめの内容になるんじゃないだろうか…という不安が拭いきれなかったのだが、終わってみればとてもちゃんとしてて最後まで楽しく見れた。(実際「やめてくれ~」みたいな気持ちになる場面も都度あったはあったのだけど) ちゃんとしてたっていうのは当たり前の事かもしれないけど、キャスティングが良かったのと、題材との向き合い方が、地下アイドルカルチャーの記号を散りばめて本質的に語るのはそれ以外のありきたりな人間関係の話…みたいな事にになっていなくて、あくまでもアイドルとファンの関係性の良い部分も醜い部分を描こうとしていた様に感じられたので。
キャストについては、主演の白石聖さんや桜井ユキさんは言うまでもないのだけど、サニサイのメンバーが実際の地下っぽいリアリティとテレビドラマ的なファンタジーのバランス的な意味でも、良い塩梅の組み合わせだったのが大きくて、特にリーダーの花梨役を演じていた松田るかさんがとても良かった。今年自分が見たドラマで言うと『カケグルイ Season2』や『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』にも出ていたけど、どれもなんか性的な意味じゃなく良い意味で生々しい感じがあったし、ちょっと大袈裟に言えば人間のダメな部分とか見せれられる人なんだなと思う。
あと途中から天木じゅんさんののりたまが面白く見えてきて、放送を見ながら「のりたまのりたま」などとふざけ半分で騒いでいたら、終盤いいポジションのキャラクターになったのも面白かった。
題材である地下アイドルとそのファンの関係性の描き方という点で言えば、上の方で書いたみたいに見る前の想像通りきつめの描写を毎回見させられはしたのだけど、少し落ち着いて考えてみると自分が見に行っていたのは主にメジャーなアイドルだったとは言え、居酒屋などで似たような時間を周囲の人と過ごして来たような気がしてきて、別の辛さじゃないけど何かを突かれるような感覚に変わった。
中でも第7話で脱退を切り出した花梨が、自分を推してる小豆沢に「他界したのに飲み会だけ来る人いるんだよね?」的な話からライブ中も愛の事ばかり見ている事に対する嫉妬のようなものを告白するシーン(*)で、「アイドルファンの中でアイドル自体よりもファン同士のつながりの方が大きいんじゃないか、だったら自分達って何なの」という事を伝える場面がとても沁みた。それが悪い事でもないと思うだけに。 また最終話にラストライブを見逃した愛とハナの不起訴祝いで、ファンが集まってラストライブの録画した映像を見るシーンにおける、各々のファンが自分の推していたメンバーのスピーチを見守る際の眼差しにも共感できる何かがあった。
こんな風に完全にキャスト目当てで低く見積もっていた作品の出来がちゃんとしていると、やはり国内のドラマも捨てたもんではないというかちゃんと見ようという気持ちが改められる。