いまこそ税と社会保障の話をしよう!
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発行年月 : 2019年12月
出版社 : 東洋経済新報社
前にビデオニュースで著者が話している内容が面白かったので読んだ。
簡単に言えば、消費税ベースで税収を考えて、その税収を現金のばら撒きではなく医療や育児などのベーシックなサービスの負担に回せば良いとか、経済成長という幻想はいい加減捨てる、誰もが不安のない社会を目指すとかそういう話なのだけど、いま政治の現場にいる左派とかリベラルの政治家から出てきても良さそうなのになかなか出てこないアイデアで新鮮だった。
こうした話が今の日本でどれだけ実現可能なのかと言えば、消費税減税に反対すれば反射的に緊縮ってラベリングがされてしまうし、政治不信から来るのであろう国民の税金アレルギーも凄いので、そうそう話が進まないだろうな…と思ってしまうけど、MMTみたいな眉唾な話よりは全然希望が持てると思う。
勤労と分度、自己責任の社会じゃないですか。この社会を前提にする限り、所得を増やす以外に不安解消の方法はないですよね。この社会が前提だったら、所得が増えて貯蓄できるようになります。ということでしか、未来は描けないじゃないですか。
でもいつも講演で聞くんですけど、野党が――立憲でも、共産でも、国民でも何でもいいですよ――政権をとったときに、アベノミクス以上のことをやって、安倍さんより経済成長させられると思う人はいますか、と聞くと、手をあげる人はほぼゼロなんです。リベラル支持者を相手に講演してるのにです。これが国民の感覚でしょう。(p.58)
最近、すっかり定着した「インバウンド」も含めて、お祭りや外国人に頼らないと維持できない経済を僕たちはどう考えるべきなのでしょうか。
しかもそれが「成長戦略」だと言われはじめてます。発展途上国のような発想になりはじめている気がしてなりません。そのことにどれだけの人たちが気づいているのか。 (p.86)
一部の人たちを受益者にするやり方――日本はその典型ですが――は疑心暗鬼を生みます。ろくに働いていないあいつらが、なんで病院も、学校も、子育ても金を払わずにすむのか。本当は働けるのに嘘をついているんじゃないのか。公務員は裁量的でいい加減な審査をしているんじゃないのか。ほら見ろ、生活保護が反社会的勢力に使われてるじゃないか。高齢者は大した病気じゃないくせに、病院に入りびたってるんじゃないか。考え始めたらきりがありません。 (p.102)
新自由主義の正しさなんてどうでもいい。新自由主義であれ、なんであれ、成長を夢見させてくれる理屈を国民は探していた。それは、成長が止まれば絶望に直面するしかない「自己責任社会」があったからだ、僕はこう言いたいわけです。 (p.114)
日本では左派から消費税への反発が強く、アメリカには連邦レベルでそもそも付加価値税がない。だけど金持ち増税だけでやれることはたかが知れている。ようするに、税をつうじて人びとのくらしを保障するということが難しいふたつの国では、借金によるバラマキを左派が主張するしかない、ということではないでしょうか。 (p.140)
これは理論的な正誤の問題じゃない。哲学の欠落の問題です。社会像なんてどうでもいいのだ、いまいる困っている人を救えばなんでもいいのだ、そう議論する人達がいます。ポピュリズムで何が悪いという人もいます。
いいでしょう。では、金持ちをたたく、あるいは借金して金をバラまけば幸せになるのが人間か。痛みを分かちあい、すべての人の幸福を追及するために知恵を使うのが人間か。どちらなのでしょう。もし前者だとするならば、それは人間へのリスペクトがまったく欠けた議論です。そのような人たちの弱者への「配慮」とはいったい何なのでしょう。 (p.210)