あのこは貴族
https://gyazo.com/e8b778155eb93c9cc5c61c1529c9749e
発行年月 : 2016年11月 (文庫版 2019年5月)
出版社 : 集英社
松濤の医者の家に生まれた三姉妹の末っ子が婚活に奔走して云云かんぬん...という、なんだか現代の東京版『細雪』みたいなプロットで、 ジェイン・オースティン作品のような、階級社会の結婚にまつわる物語の類が好きな自分のような人間にとってはなかなかドンピシャな作品だった。
ただ『細雪』みたいな話は好きなんだけど、やっぱり今書くんだったら今なりのテーマ設定は入って来ないのかな...などと読みながら少しソワソワしていたら、終盤に差し掛かって目線が3人の女性に分かれるや、それまでの東京の狭いエスタブリッシュメント階級の間でのあーでもないこーでもないみたいな話をちゃぶ台返しするように、家庭や職場における女性の在り方や階級間の格差的な話にザクザク切り込み始めて、胸のつかえがとれた気分になった。また、それでありながら普遍的な女性の幸せな生き方てなんじゃろねみたいな話になっているのがとても良かった。
Amazonのレビューを見ると「男性描写が浅い」というような感想もあって、そう言われてみればそうかもなとも思うのだけど、女性の視点による物語なのだし、見えてくる男性像が紋切り型であったり得体の知れない生き物のように描かれる事の必然性というか、そういう描写が面白みになってる部分もある気はする。
映画化も決まっているらしく、『グッドストライプス』の岨手由紀子さんが監督するとの事で、これもとても楽しみ。 文庫版で読んで、読み終わてから単行本版の書影も見たのだけど、文庫版のカバーイラストの方が好きだな。