粉瘤息子都落ち択
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著者 更地郊
装丁 森敬太
発行年月 2026年2月
出版社 集英社
ラジオで岸本佐知子さんが薦めていたのを耳にしたり、モチーフとしてストリートファイター6や、格ゲー用語であるところの「択」みたいな概念が出てくるっていう情報もあったので読んだ。
ところどころ文章として難しいというか読み取りづらい箇所もいくつかあるのだけど、それより読みながら声出して笑っちゃった箇所もいくつかあってトータルの読書体験として楽しかった。
忍は当時からすでに長髪ではあったが、少なくとも身体は俺よりも細く、いわば長髪の色白もやしだった。予想通りに雪は降り始めて、ボタ雪の雪片が顔に刺さった。郊外の暗い道を更に薄ら暗い川沿いの道に入ったあたりで、忍のほうから何か歌らしきものが聞こえた。Bメロの『ララライララライ』でやっとそれがレミオロメンの『粉雪』だと分かるほど音程が怪しかった。このクオリティの歌声でサビ聴きたくないなと直感し、その期待以上に下振れした。サビの第一声でキーの上がりきらない、男が発する情けない声のまま、多分一度も音程が合わなかった。録音して新曲だと言い張ってもバレないと思った。 忍が歌っているのは似て非なる楽曲『ボタ雪』。なぜこいつと出会ったのがタダ飯目当てに参加したアカペラサークルの新歓だったのだろうか。一番を歌ったらしい忍はしばらく黙ったが、またサビだけ歌い始めたので「うるせえ」と声を荒げて制した。
(p55,56)
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