空白の天気図
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装丁
発行年月 2011.9.2 (文庫版)
広島の原爆と、原爆が投下されたその1か月後に上陸し2000人以上の死者を出した枕崎台風に対峙した広島気象台の職員たちの記録を再構成したノンフィクション。
そもそも、恥ずかしながら原爆と広島についてのまとまった本をちゃんと読んだ事がこれまで無かったので、単純に8月6日の描写の地獄っぷりに絶句してしまう。それと同時に登場するのが気象職員だからなのか、原爆が爆発した瞬間を人の体がどのように捉えたのかがものすごく克明に言語化されていて、変な映像を見るよりも情報の密度が高い。
また放射能の被害を受けながら業務の再開のために奔走したり、とにかく記録する事は続けなくてはいけないという使命のもと、市民の口述の記録をかき集める様子だとかを読むと、結局自分の所属する社会がどういう状況であれ、自分の受け持った仕事に責任を持って全うする事でしか前に進まないんだな、みたいな単純なところに行き着いてしまう。
しかしそれも受け取り方に気をつけないと、日本の職人すげーとか組織やべーみたいなポルノに陥りかねないし、はたまたアイヒマン的な凡庸な悪みたいな事にも繋がりかねず、それ以前に公共性や倫理感の構築がなくてはならないのだとは思うけど。