ジルベール・シモンドン
シモンドンの哲学への導入
現代文化の技術への二つの態度
技術崇拝
技術嫌悪
どちらも適切ではない
技術のリアリティ
技術固有の進展 = 発明を考察しなければならない
発明の分析:タービン
防水性と絶縁を施した発電機と川の流れで回転するタービンをどう組み合わせればコンパクトかつ電力の強い装置を得られるか
タービンの付いた水圧管の中に発電機を繋げる
水:タービンを動かす + 冷却
油:滑りをよくする + 水の侵入を防ぐ + 熱をカバーに伝える
1. 複数の機能が凝集している = 多機能化
水と油の悪影響を相殺し合うようにユニットが組まれている
水だけでは発電機を錆付かせる
油だけでは発生した熱を逃がせない
技術と環境の関係
既存の環境に技術をどう適合させるか
→ 発明と言うには不十分
2. 新たな環境や関係を創り出すこと
項 (タービン,発電機,川) → 関係
既存の項を前提として,それらをどのように結びつけるかではない
関係 (自然にある川の水流と発電機の中にある油) の設立 (項は自動的に決まる)
水流と油は一つに組み合わさっている = 新たな環境 (連合環境) 技術が自然と一体となって新たな環境を生み出す
発明とは項をどう配置するかではなく,新たな関係を創造してから項を分ける
自然と項が一体となり一つの項になった
1 + 2 = 発明 (関係性を創り出す点に技術の跳躍 = 発明がある)
発明が自分自身で創り出した環境・関係の中でしか問題を解決できない
技術の進展の自律性
技術の進展は自律的である
自分で自分を律する
技術は {自然科学・数学,経済,社会} と関係しつつも,その進展は他のものに還元されない
技術は科学の応用
技術は社会の要請だけで決まる
↑ これらの考えではない
技術的な問題の真の解決
= 複数の機能の凝集でなされる
個別の科学的事象 (電磁誘導で電気が発生する,水と油が混ざらない,など) は理論によって導かれているが,それらの組み合わせ (複数の機能の凝集) は技術に固有のあり方
= 技術の自律性
技術が物理学や化学に還元されない
批判
社会的制約や関係性を考慮していない
シモンドンはこれらを認めてはいたが
感想
核分裂が発見されなければ核兵器は開発されなかったという意味では (また核兵器を開発しても良いかという社会の倫理的な問題や戦争を優位に進めるために必要と考えた政府からの要請もあり) 技術の発明は社会の問題に起因するが,これはマクロな社会の流れや歴史を見た時の結論であり,核兵器の開発というミクロな発明に限って言えば,核分裂が発見されたからといって自然と核兵器が完成したわけではなく,そこには科学者の発想 = 創り出された新たな関係性が重要な役割を果たしている
シモンドンはそこに重点を置いて考えているが,批判者は歴史的な視点に立っているという違いがあり,それはどちらも誤りではないように感じる