「大人になって振り返ってみた中学三年生」(2000年1月)
【付記: 2000年1月、山口市立白石中学校で(当時長男が中三に在籍)、「大人になって振り返ってみた中学三年生」という文章の作成が父母に対して求められ、卒業を目前に控えた中学三年生に対して、文集にして配布された。以下は、その時に書いた文章である。】 3年 1 組 氏名 某父
中学二年から三年にかけて、私は生徒会の役員をやっていた。白石中で言えば、「執行部」にあたるだろう。その生徒会役員と、各クラスの学級委員が集まって、謝恩会の準備を進めていた。卒業式の後に、先生方や親たちを招待して、色々な催し物を披露するのが、私の通った中学の慣例だった。
私は、謝恩会の司会を、自分がやると申し出た。下心があった。もう一人の司会者(アシスタント)を、好きだった「彼女」にやってもらって、いっしょに準備の仕事をすることで、二人になれる時間を作ろうと思ったのだ。「彼女」は、別のクラスの学級委員だった。私は、強引なまでに「彼女」を推薦して、二人は司会者をやることになった。
私は、中学卒業と同時に、離れた別の学区へと引っ越すことに決まっていたので、最後のチャンスだと思った。ずっと好きだったこと、離れてしまうけれど、高校へ行っても手紙の交換をしたいということを伝えた。そして、引越し先の住所を紙に書いて手渡した。「彼女」は戸惑っているようだった。
謝恩会が無事に終わった後、「彼女」は、住所を書いた紙を返しに来た。「やっぱり、これは受け取れない。」と彼女は言った。「とてもあっけない終わりだな。」と思ったのを覚えている。
彼女が手紙をくれたのは、それから一年近くたった高校一年の正月のことだった。一枚の、しかし、びっしりと書かれた年賀状だった。もちろんそれから、二人には色々なことがあった。
「彼女」は、いまは私の奥さんで、そして中学を卒業しようとしている「君」がいる。ちょっと不思議な気分だ。私の中学卒業時の、あの「下心」がなかったら、いま「君」はこの世に存在していないかもしれない。
あれは、あっけない「終わり」なんかでなくて、「始まり」だったのだなと、いまでは思える。「君」の人生も、これから始まる。
【mixi日記・コメントのやり取りの中で書いた「裏話」みたいなものを追記】
引っ越し先の住所を書いた紙を返しに来て、「やっぱり、これは受け取れない。」と彼女(妻)が言いに来たとき、実は、もう一人の女の子といっしょでした。
そのもう一人の女の子というのは、私がその何ヶ月か前までつきあっていた(中二から中三にかけて一年以上つきあっていた)女の子でした。その子は、断りに来た彼女(妻)の横にいっしょにいて、私のことを睨みつけていた(「別れたばっかりなのにもう・・・」という感じで)のを、よく覚えています。
そのつきあっていた女の子は、受験が近くなってきた時に、私に向かって、「結局、私とあなたは、これから住む世界が違っていく人間なんだから」と言いました。当時東大に70名くらい合格していた学区外の進学校(湘南高校)へ行く予定だった私と、普通高校には(もちろん大学にも)進学しない自分を、そんな風に比べていたことに気づかされて、虚をつかれたのをよく覚えています。その子の方が、「諦め」を知っている「大人」だったということですね。 そして、高校2年生になってから、「彼女(妻)」と(中学卒業以来の)再会を果たし、湘南高校の文化祭に呼んでデートをしたときの想い出の写真が、これだった(写真部の藤本君撮影)。 https://gyazo.com/d14eac5bf1405263ee8253a9edb0c9f5