「保護者代表挨拶」原稿(2000年3月)
【付記:2000年3月 山口市立白石中学校の卒業式・保護者代表挨拶のための元原稿(当日は原稿なしでスピーチ)】
今日、子供たちは、新しい旅立ちの日を迎えることができました。これまでの三年間のことを思い浮かべながら、保護者を代表しまして、お世話になりました先生方にお礼のことばを述べさせていただきます。
三年前の入学式は、前の旧い体育館で行なわれました。まだ、制服が大きめで、初々しいけれど頼りなさそうな子供たちの姿は、後ろに座っている体の大きな三年生たちの陰に隠れていて、直接見ることができず、私はモニターを通して入学式を見ていたのを思い出します。
中学一年生の家庭訪問のときに、私は、担任の先生に「小さな政府」ならぬ「小さな学校」という要望を述べたことを覚えています。
私たち親は、多くのことを学校に押し付け、そのために先生方は多くの仕事を抱え込み、その結果、子供の生活の全般が学校化された空間になっていく・・・。そのような学校への過度の囲い込みを避けるために、学校の機能を最小限にすべきである・・・そのような考えでした。
いま振り返ってみますと、子供を初めて中学に入れる親として、私は少々気負いすぎていたかもしれません。
実際の白石中学校は、「大き」すぎることも、また「小さ」すぎることもなく、ちょうどいい「中くらいの」学校であったと、いまでは思っています。
新聞やテレビなどのメディアを通して伝わってくる、昨今の中学校の姿は、このような「ちょうどよい」「ほどよい」という、あたりまえの中学校生活を送れることが、いかに難しいものであるかを教えてくれます。
ですから、この「ちょうどよい」「ほどよい」「中くらい」という状態が、この白石中学で実現できていたことは、ほとんど「幸運」といってもいいくらいです。
白石中学は、数ある中学の中でも、貴重な「オアシス」なのかもしれないと思います。
このような「幸運」は、先生方お一人お一人のご尽力と、また先生方のチームワークがもたらしてくれたものです。先生方に敬意を表し、深く感謝したいと思います。
中学校までは、たまたま自分が住んでいる地区の学校に通うのであって、得意なことも将来の希望も異なる、さまざまな友達と一緒に過ごします。いわば「偶然に」ここにいっしょに居合わせたのです。
しかしこれからは、彼らは、次第に自分で選んで引き受けていく、つまり自分で「必然性を作っていく」人生へと入っていくことになります。
ここに住んでいたから「たまたま」「偶然に」一緒にいたということが、実はとても貴重なものであったことを、もっともっと後になってから、彼らも思い出すことになるだろうと思います。
私も、昔の中学校の友達と今でも会う機会があります。そのようなときには、中学時代の、まだ「何者でもなかった」自分にもどって、「たまたまいっしょにあのときを過ごした」ことのかけがえのなさを味わいます。
きっといつか、子供たちも、そんな再会を味わうために、先生方のところを訪れることもあるだろうと思います。その日まで、遠くから見守ってあげてください。
最後になりましたが、先生方のご健康とこれからのご活躍をお祈りしまして、挨拶のことばに代えさせていただきます。
「保護者代表挨拶」