最深潜在性
『現実性の問題』の第2章に出てくる「最深潜在性」についての質問があったので、私は次のように応答しました。拙著を読んでいただく場合の、参考になるといいのですが。 >
最深潜在性は、円環モデルで言えば、左半円を上へと進んで行って「始発点」の一歩手前(ギャップのところ)に来ている状態に相当します。産出力に満ち満ちていながらも、まだ「何かが起こった」に至らない段階です。能力はあっても発揮はされていない状態の、大げさになった世界バージョンが、最深潜在性です。最深潜在性は、場面に応じて、無尽蔵内包・無限内包ともマイナス内包とも呼ばれますが、機能や文脈や概念の括りからも退隠した「力が漲っただけの存在状態」です。身体が分節されていない能力(潜在性)に満ち満ちているように、世界そのものがそれ以上に深い能力(潜在性)に満ち満ちていて、そこからの偶然的な(なぜかギャップを飛び越えた)出現が、「何かが起こった」という始発点に他ならないわけです。そのような観点から言えば、最深潜在性は、時間的には「(出現によって)もともとX(の源)だったことになる」という起源としての過去の成立よりも前の「大過去」が相応しいことになります。円環モデルの左半円には、大過去性が割り当てられていたのは、そういう事情があるからです。
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