松本卓也「今、戦略的に「自閉」すること」
今、戦略的に「自閉」すること──水平的な横の関係を確保した上でちょっとだけ垂直的に立つ|精神科医・松本卓也インタビュー | HAGAZINE
上野と中西の本の中で「当事者」として想定されていたのは、たとえば女性や障害者でした。しかし最近、当事者の声として強く聞こえるようになったのは、いわゆる「非モテ男性」の人たちだったりします。弱者男性論の文脈で、当事者性が強く指摘され始めているんです。もちろん、男性が当事者性を主張すること自体はとても大事なことです。それ自体に問題があるわけではない。しかし、なぜか目立っているのは当事者性を盾にした女性叩きだったりする。たとえば「女性が下方婚をしないことが問題だ」とか「女性専用車両は男性差別だ」といったようなことを彼らは言うわけです。これは明らかに戦う方向を間違っています。本来、男性が男性性で苦しんでいるのであれば、性別役割分業を批判するフェミニズムと連帯ができるはずですし、トロフィーワイフ的に女性を物として捉えていることが結果として自分たち自身を困難な状況に追い込んでいることを無視している。
2020/3/5