金原ひとみ『デグリネゾン』
バツ2の40歳手前の女性作家で21歳の大学生の恋人がいる主人公には、中学生の娘もいる。
前の2人の夫との関係も良好。
若い恋人との同居のタイミングで、娘は実父と生活をはじめる。
主人公が娘との生活を失った悲しみや怒りが、誰にも受けとられようもない形でさまよう様が、すばらしく描かれている。
Amazonのレビューを見ても、主人公の境遇に共感できないことが書かれている。
飛べない生き物と飛べる生き物は分かり合えないと、小説の中ではあるが、言い放たれている。
しかし、だからこそ通じる共感もある。
2023/1/8
メンヘラ主人公が仕事を失った二番目の夫を精神的虐待するところ、大学生の三番目の夫をサンドバッグにしてボコボコに責め立てるところがリアル。現代日本社会において野放しにされている暴力を、加害者視点で描く。
2023/1/14
毎日新聞に掲載されていた、江國香織の書評が面白かった。
今週の本棚:江國香織・評 『デクリネゾン』=金原ひとみ・著
2022.11.12 東京朝刊 14頁 読者面 (全1,378字)
感情ではなく感覚が、まるで自分のそれをむきだしにされたかのように伝わってくる。感情ならば説明も共有も可能だが、感覚は違う。それを、言語を使った肉体的な解剖みたいに小説にしてみせる金原ひとみの凄(すさ)まじさ!
【金原ひとみ作品 初のオーディオブック化】 最新作『デクリネゾン』をaudiobook.jpで配信開始|株式会社オトバンクのプレスリリース
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若い世代(10台後半から20歳前後)の良さと若い世代への違和感。合理性。言葉の少なさ。素直さ。素直すぎること。想像力の乏しさ。粘りのなさ。
多くの人が正直であること。正直すぎる。嘘をつく必然性がない。嘘をつくと後々面倒くさくなる。
2023/1/16