電力工学
1
電気エネルギーの特徴
周波数・電圧・信頼度が大切
使用量と発電は同時同量である必要があり、多すぎたり、少なすぎたりすると停電する
日本の電気事業者の設備容量は264GWで一人当たり2.1kW
原発級の大型発電設備で1基約1GW
日本人1人当たりの1次エネルギーの使用量は4.7kwで、平均の使用電力は0.95kW
電力需要に対応するためにさまざまな発電方法をまぜ、エネルギーミックスを行っている
ピーク供給力
出力調整力がとても大事になる。→ダム水力・(石炭火力)が主になる
ベース供給力
コスト重視→原子力・自流式水力、(石炭火力)が主になる
ミドル調整力
上記以外の安定電源が主
太陽光発電量の増加に伴ってダックカーブの懸念
2
水力学
ベルヌーイの定理(流水に関するエネルギー保存則)
水の密度はρ(ロー)はほぼ一定で1000kg m^-3
流水の連続の原理
流量 = 断面積*流速は一定
流水の単位質量当たりの運動エネルギー(1/2 * mv*2 / m)と位置エネルギー(mgh /m )と圧力(pv/m = p / ρ)の和は一定となる
ベルヌーイの定理は
ρ v^2 / 2 + ρ gh + p = 一定
位置水頭、圧力水頭、損失水頭
ベルヌーイの定理をpρで割ると、v^2 / 2g(速度水頭) + h(位置水頭) + p/ρg(圧力水頭) = 一定(全水頭)(単位はm)となり水頭とは各エネルギーを高さに換算したものである
実際の水が流れる場合は摩擦などによる損失があり、その損失を高さに換算したものを損失水頭h_lossと呼ぶ
理論水力、実際の電気出力
理論水力は落差H メートルの水力発電所で流量Qだった場合、最大動力 Pは9.8QH kW
落差Hmから損失水頭h_lossを引いたものを有効落差H_effと呼ぶ 発電効率
水車の発電効率は80パーセント
水力は抜群に高効率故、揚水発電は実用的
熱力学
熱力学第一法則
気・液体に加えた熱量δq は気・液体の内部エネルギーの増加量duと気・液体が外部にする仕事δwとなる。(エネルギー保存則)
δq = du + δw
状態量とは系の状態で一意に定まり、履歴や経路に依存しない物理量のこと(p,v,T,u,s,i)などの微少量はdで書き、w,qはδで書く
熱力学第二法則
熱サイクル
カルノーサイクル
カルノーサイクルのT-s線図は長方形になる
熱効率
エンタルピー
エンタルピー
内部エネルギーuと圧力エネルギーpvの和 i = u + pvをエンタルピーと呼ぶ
等圧過程ではδq = di
断熱過程ではδw ≒ -di
火力発電では等圧過程で、加熱・放熱し、断熱過程で仕事をするため、両者はi(エンタルピー)のみで計算でき、iはとても便利
p-v線図、T-s線図
p-v線図の線下部の面積はw(仕事)表す
T-s線図の線下部の面積はq(加熱・放熱量)を表す
3
再生可能エネルギー
水力発電は酷い変動性はない
ダム無しの水力発電はベース供給力用、ダムありの水力発電はピーク供給力用
水力発電は効率が80パーセントで、揚水式でも70%
耐用年数が長い
ダム建設時の環境負荷大
揚水発電は実用的な大電力貯蔵技術
ダム式・揚水(ようすい)式は調整力が高く、ピーク供給力に適している
貯水量による分類として、流れ込み式、調整池式、貯水池式がある
流れ込み式は河川の自然流量を利用し、水を溜めないため、調整力は小
調整池式
電力需要の日変動などに対応可能
貯水地式は貯水量が多く、電力需要の季節変動にも対応可能
落差の取り方の分類として、ダム式、水路式、ダム水路式、揚水式がある
水路式
水路を長くし、地形の傾斜による高低差を落差にする
ダム式
ダムの水面から水車までの高度差が落差
ダム水路式
水路を長くし、地形の傾斜も利用して落差を大きくする
ダムのあるところから落差を大きくとれるところまで水路で水を導きく
揚水式は下池と上池を設けて落差を作る
揚水発電
余剰電力で 揚水を行い、電力不足時に発電する
原発とセットにすることで採算がとれた
水撃圧とは入り口弁を急に閉じた時に、水の運動エネルギーが水圧に変わり、高水圧の波が水圧管上部に伝わるため、対策をしないと水路が壊れる。水路を強化するのはコストがかかりすぎるため、自由水面を設けたサージタンクで水撃圧を吸収
調整タンクとは水量・水圧の急変を抑えるための調整タンク
サージタンクは水撃圧からの水路の保護をしている
4
水車の種類と構造
衝動水車としてペルトン水車
速度水頭(運動エネルギー)を回転エネルギーに変える
気中に置かれた水車
高落差・小水量
反動水車として、フランシス水車など
水中に置かれた羽根車を水流の圧力で回転させる
圧力水頭(圧力エネルギー)江を回転エネルギーに変える
中〜低落差・小〜大水量
高落差の場合、速度が上がりにくいペルトン水車トンが適している(回転速度が過大だと、遠心力や水の抵抗で水車が壊れる)
低落差の場合、高速でコンパクトな水車の方が経済的
吸出し管の構造と役割
吸い出し管がなければ捨てられていたH_sとv1のエネルギーを回収してくれる
キャビテーション
水中で水の一部が蒸発し、気泡ができる現象
飽和蒸気圧以下で蒸発してしまう
キャビテーションによってランナの表面が損傷(壊食)するリスクがある
そのため、ランナ出口の水圧を飽和水蒸気圧より下げない
回転速度の選定で、水車の比速度をあまり大きくしない
5
汽力発電とは蒸気の力で蒸気タービンを回す発電方式
汽力発電の等圧加熱→断熱膨張→等圧(等温)放熱→断熱圧縮のサイクルをランキンサイクルと呼ぶ
臨界点を超える高温・高圧条件で熱サイクルを実行する発電を超臨界圧発電という
臨界点は647.3K、22.12Mpaで218.3気圧
再熱サイクル
高圧タービンが排出する低温低圧蒸気を再熱器で高温低圧にし、低圧タービンで利用する。
効率が上がる
再生サイクル
タービンの途中から蒸気の一部を抽気し、ボイラに入る前の水を加熱す。ボイラで要する加熱が減り、復水器で捨てられる熱が減るため効率が改善。
再熱再生サイクルとは
再熱サイクルと再生サイクルの組み合わせでさらに効率向上を目指す
送電端熱効率 = 発電端熱効率 - 発電所内の消費電力であるため、発電端効率の方が高くなる。
6
ガスタービン発電とは燃料を燃やした燃焼ガスでタービンを回す発電方式
ガスタービン発電の(断熱圧縮->等圧加熱->断熱膨張->等圧放熱)の過程をブレイトンサイクルという
コンバインドサイクル発電とはガスタービン発電と汽力発電などを複合することである。排熱回収式では排熱回収ボイラを使用する
燃料中・気中の水分や燃焼時に生成される水分は燃焼時に水蒸気になり蒸発潜熱を消費する。そのため、燃焼ガスとその中の水蒸気は排ガスとして捨てられ、潜熱は回収できない。この潜熱を取り除いた利用可能な燃焼熱量のことを低位発熱量(LHV)といい、除く前をHHV(高位発熱量)という
7
石炭は瀝青炭(れきせいたん)(C含有量8~9割、炭化水素を含み、柔らか)を使用
石油はC重油(最低価格・最低品質)を使用
天然ガスは-162度で液化して輸送
LNGは主にメタンCH4を利用
コンバインドサイクルの燃料はほぼLNG
SOx
水との反応で硫酸・亜硫酸になり、酸性雨
NOx
水との反応で硫酸などになり、酸性雨
気中で硝酸塩になり光化学スモックになりうる
SOxの対策としては脱硫装置
NOxの対策としては脱硝装置
煤塵(ばいじん)・PMは集塵装置
CO2を回収、利用、貯留することをCCUSという
8
原子力発電とは核分裂反応による熱を水で蒸気とし、汽力発電を行う
日本では沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)があり、合わせて軽水炉という
ウラン235とウラン238 は 天然で0.7%:99.3%
低濃縮ウランで3~5%:97~95%
減速材に水を使うとnを吸収してしまうため、濃縮ウランを使わないと臨界できない。軽水炉は軽水を使用。
9
BWR
制御棒は下から挿入で、蒸気は放射性物質を含有
建屋は暑さ1mの鉄筋コンクリート
制御棒は水圧駆動
PWR
沸騰させないので、出口では熱湯
蒸気に放射性物質を含まない
制御棒は上から挿入
PWRがBWRより安全とされる理由
電源喪失時、制御棒の挿入が上からなので、自然落下するから
圧力容器が高圧用なので頑丈
格納容器容量がBWRの10倍で、水素爆轟(すいそばくごう)しにくい
現在の国内で稼働中の原発は全てPWR
原子力発電の長所として、直接のCO2の排出は0で、ニアゼロミッションという
プルサーマル運転とはMOX燃料を用いて、核燃料サイクル方式をとっていることをいう
10
大気のGHG(温室効果ガス)が無いとすると、地表の温度は255k(-18度)になる。温室効果ガスがなけれ生物が住むには困難
待機の温室効果ガスがあると、288K(15度)
GHGの主成分は水蒸気で、(CO2,O3,CH4,N2OなどもGHG)で増減は人類の活動に依存
産業革命以後1度上昇しており、さらにあと1度上昇すると深刻な事態になる
地球温暖化の影響として、凍土地帯や海底からメタンハイドレートが融けるため、メタンが放出され、さらに温暖化が激化する
メタンハイドレートとは低温・高圧条件下で水の結晶個体にメタンが取り込まれた氷状の個体
バイオマスとは動植物由来の有機物でエネルギー利用できるもの
IPCCは人間の影響で地球が温暖化してきたことは疑う余地がなく、これを抑えるのに、CO2累積排出制限が必要としている
1992年地球サミット、1994年発効の国連帰国変動枠組み条約、1995年から毎年締約国会議(COP)を開催
COP3(1997)
京都議定書採択
COP21(2015)
パリ協定
21世紀に、正味のGHG排出量を0にしたい
2023年の目標を持つことに合意。日本は46%
変動性再生可能エネルギーの発電量は太陽光発電は1/8、陸上風量は1/4依存している
11
太陽光電池の主流は単結晶シリコン対応電池で変換効率は20%
パワーコンディショナーの容量よりもPVアレイの容量を増やし、売電効率・設備利用率改善を行うことを過積載という
電力計(スマートメータ)は売電と買電で2台必要
太陽光発電は駆動部が少なく、騒音、振動が出ない
太陽電池の電力電圧特性において、常に最大電力を追従することを、最大電力点追従制御という
発電事業者による再エネ発電電力を電力会社が固定高価格で長期間買い取る義務を追う固定価格買取制度(FIT)
買取費用は電力需要者(国民)が賦課金(ふかきん)として負担
2022年よりFITからFIPに移行(売電価格を市場価格+一定補助額)に
12
風力発電は
回転パワー = 1/2パワー係数 * 空気密度 * 受風面積* 風速^3
風車軸方向を風の方向に合わせることをヨー制御
パワー係数がよくなるように角度を調整することをピッチ制御という
強風時に運転を止める速度をカットアウト速度という
風力発電が起動可能になる風速をカットイン速度という
陸上風力の風況がよい国内地域は北海道と東北
13
同時同量のためには、使用量(変動性) = 変動性発電量 + 調整力発電量