責任
あまり辞書の定義がピンとこないので自分なりに定義したい。
とか言う前に辞書の定義をみてみよう。
Oxford - responsibility
a duty to deal with or take care of somebody/something, so that you may be blamed if something goes wrong
僕の定義は以下の通り:
責任とは、
実行すべき任務があって、
それを行わなかった場合に不利益を負う
ことをいう。
この定義の有用性(1)
辞書の定義で言うso that you may be blamedの部分が「不利益」に対応するが、「不利益」の方がより抽象的になっていてかつ適切だと思う。
「はじめの3要件を満たすこと」の立証責任は原告である特許権者が負い、
「あとの2要件を満たさないこと」の立証責任は被告である被疑侵害者が負う
ものとされている。しかし、別に原告も被告も、「立証の任務」を果たさなかったからと言って「責められる」わけではない。そうではなく、訴訟に負けると言う不利益を被るのである。
この定義の有用性(2)
「果たすべき任務」と、「それをしなかったときの不利益」(enforcement)とを分離して理解できる。少なくとも、分離しうるものだと言うことを明確にできる。
仕事において、「これを達成する」と言うことを宣言し、それでいて達成できなくても残業はしない、と言うような振る舞いが必要な場合、「責任」と言う概念は任務とenforcementが結合していて不便である。こういう振る舞いをしてほしいマネージャーの立場では余計にそうだと思う。不便だと言うことがわかるだけで、2つを分離する言葉を得たわけではないのだけど。。
不利益=enforcement?
なお、達成しなかった場合の不利益のことをenforcementと言い換えることは今僕の中で自然に浮かんだのだが、この考え方は白石「独禁法講義」 に負っていると思う。(法律の分野では一般的な考え方かもしれないけど、自分がこの発想に出会ったのがこの本という意味) 独占禁止法のことはあまり覚えていないのだが、この本は「ルール」と "enforcement" を定めたとき、「ルール」の適用要件そのものは本来enforcementとは無関係に決まるはずなのに、実際にはenforcementの強さによってルールの適用のあり方も影響を受けると言う現象を、サッカーのファウルの「適用のしかた」がペナルティエリア内外でどう変わるか、と言う具体例によって説明しているところが感動するほど秀逸でこの部分だけでもお勧めできる。
「責任を取って辞職します」の話
「責任を取って辞職します」という行動は、責任を果たしたと捉えられることもそうでないこともある。この現象はどう説明されるのだろうか?
それまでの任務を果たせなかったことに対する不利益として「辞職」に甘んじているのだから、この人は責任を取ったのだ、と言えることもある。しかし、果たすべき任務がまだ残っている場合には、「辞職」は不利益の甘受だけではなく残りの任務の放棄も同時に行うことになるから、任務と不利益の釣り合いが取れていない無責任な行動ということになりそう。でもまだちょっと定義が甘いのかもしれない。