熱力学へのアプローチ
ミクロな知識を「カンニング」せず、ミクロな理論から独立してそれ自体が完結した体系になっていることが望ましい
ミクロな理論を出発点にしたアプローチが望ましくない理由
熱力学の基礎づけに統計物理学を用いれば、熱力学は分子論に立脚して成立する体系だという誤解を与える 経験科学として不健全である。ミクロな統計物理学がマクロな熱力学の基礎なのではなく、マクロな熱力学がミクロな統計物理学の基礎と考えるべきである
統計物理学、特に平衡統計物理学の限界。
熱力学の対象となるのは、単に平衡状態の性質だけでなく、平衡状態の間での任意の操作による移り変わりとその際のエネルギーのやりとりなのである。操作の前後が平衡でありさえすれば、途中でいかに荒々しい非平衡の時間変化が起きても、熱力学は定量的に厳密に適用できる。しかし、現在完成している統計物理学では、このような荒々しい時間変化を含む問題には手も足も出ない。
つまり、統計物理学から「導出」されるのは、熱力学のごく限られた一側面だけなのである。
統計物理学は、ミクロな力学とマクロな熱力学の両側からそれぞれ部分的に支えられている