先輩とサイ 2025/10/21
先輩「最近起こした会社にインターンとしてサイを招くことになりました。形式上必要なので履歴書は書いてくださいね」
サイ「はあい。…志望動機、『クローンを作りたいから』って書いちゃダメですか?」
先輩「この欄は『私はこういう理由で貴社に入りたいです』ということを書くのではなく『私は履歴書の志望動機欄にこういうことを書く人間です』という態度の表明をする場です。踏み絵としての機能を持つわけなのですね」
サイ「そう言われるとなんだか自分が痛い人みたいに思えてきました」
先輩「仮にクローンを作りたいのであっても順序立てて説明できれば良いのです。サイは結論に至るまでの過程を、他人に説明することを省くきらいがあります」
サイ「言葉にするのが面倒臭いんですよね。それも私の幼さなのかもしれない。最近は言語化のコストを支払うことが社会性なんじゃないかなと思うようになりました」
先輩「業務上必要な範囲で、ということであればそうですね。そもそもモテる人というのは『都合の良い人間』の特徴を持つのではないかと思います。呼べば来る人とか、車を出してくれる人とか。接しやすく要求を呑んでくれる人はモテるでしょう」
サイ「じゃあ、先輩がモテるのも都合の良い人だから?」
先輩「私って都合の良い女でしょう。歳を取ると人の要求に応えることが好きになるのですよね」
サイ「ちょっとわかるかも。先輩っていくつなんですか?」
先輩「25000歳です」
サイ「もう、いつも教えてくれないですよね。まあいいけど。…はい、履歴書書きました。」