アバタを介したVR会議の質の評価
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アバタを介して参加するVR会議の質や参加者の満足度を多角的に分析しました。
最初に注目したのは「社会的さぼり(social loafing)」です。アバタを介して会議に参加していますから、一部の参加者は、実はスマホをいじったりして会議に本気で参加していないかもしれません。そういった会議への参加意欲を、本人の認識と、グループ他者からの認識で見比べてみました。実験の結果、これら二つの認識の間には弱い相関しか観察されず、例えば、参加者が空間に広く移動しながら各々で会話場を形成するような状況だと、ほとんど相関が見られない、つまり、各々の会議参加意欲はアバタ越しの行動から読み取ることは難しいことがわかりました。
次に、アバタ間の対面量に着目して会議の質を定量化する試みも行いました。参加者間の「見る」「見られる」の関係を「対面量」として定量化しました。対面量と参加者個人の発話量の関係を調べたところ、部屋全体を使うような空間移動の自由度が高い環境(壁提示環境)では、対面量と発話量に正の相関が見られ、対面量から会議への参加意欲を推測できる可能性が読み取れ
た。一方、会議資料を机上に集めて参加者の移動やサブグループへの分裂を抑制した環境(机上提示環境)では、他者を見ていた時間と見られていた時間の間に逆相関が見られ、参加者の立ち位置がある程度固定されていたことがうかがわれました。会議の合意形成過程についても見てみたところ、壁提示環境では一部の参加者の意見が相対的に尊重される傾向が見られた、机上提示環境では全員が譲り合いながら合意形成が行われる傾向が見られました。
発表論文
渡会 隆哉, 鎌田 光太郎, 角 康之, 王 子洋, 高島 健太郎, 由井 薗隆也:VR会議における他者との対面量に着目した会議の質の分析, 情報処理学会論文誌(コンシューマ・デバイス&システム), Vol.15, No.1, pp.1-10, 2025年1月22日. https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/records/2000761 Koutaro Kamada, Ryuya Watarai, Tzu-Yang Wang, Kentaro Takashima, Yasuyuki Sumi, and Takaya Yuizono: Explorative study of perceived social loafing in VR group discussion: A comparison between the poster presentation environment and the typical conference environment, Proceedings of 19th IFIP Conference on Human-Computer Interaction (INTERACT 2023), Lecture Notes in Computer Science, Vol. 14144, pp.115-134, Springer-Verlag, York, UK, August 28 - September 1, 2023.
渡会 隆哉, 鎌田 光太郎, 王 子洋, 高島 健太郎, 角 康之, 由井 薗隆也:VR会議における他者との対面量に着目した会議の質評価の試み, マルチメディア,分散,協調とモバイル(DICOMO2023)シンポジウム, pp.1657-1665, 富山市, 2023年7月5-7日. (優秀論文賞、山下記念研究賞受賞) 鎌田光太郎, 渡会隆哉, 王子洋, 高島健太郎, 角康之, 由井薗隆也:VRグループ・ディスカッションにおける会議形態の違いがターンテイキングに与える影響, 第200回ヒューマンインタフェース学会研究会, ヒューマンインタフェース学会研究報告集, 25(3), pp.97-102, 2023年5月15-16日.