砂漠を歩いている
「可能世界うつろう蜃気楼」
"砂漠を歩いている"
詞・音:みやつき
喋:小春立花 + すずきつづみ
ただ砂漠を歩いている 双眼鏡を覗きながら
彼方に見えた気がした明かり わかってるきっとそれは見間違いの幻
可能世界うつろう蜃気楼 よぎるビジョン もしくはただの妄想
飛んで火に入る夏の虫 焼きこがれることに憧れる日々
こんなはずではなかったのにな 最初はわかりやすく見えていた道
約束の地へ向かいたいないのなら これに沿って進むだけだと言われた
歩いて行くと道がなくなった 気づけば周りは砂だらけだった
止まっててもどうにもなりもしないので とりあえず進んでみることにした
砂漠には色々落ちていたから 使えそうなものを拾っていった
ほとんどはガラクタばかりだったけど 双眼鏡は役に立ちそうだった
手にとって遠くを眺めてみると 左手の方に明かりが見えた
このまま進む理由も特にないので 明かりの方に向かうことにした
裏切られてから初めて気がつく 当てにはならない誰かの言葉
誰も歩いたことない道なんて どうして信じられようか
引くに引けないこの状況を 飲み込み進むのが無謀だとしても
歩いたことすらないその道の 先を信じるのとどちらが愚かか
ただ砂漠を歩いている 浮かぶ光を追いかけている
それが何かはわからないけれど きっと素敵なものだと思うから
向かうべき場所を横に捨て置いて 心のままに歩みを進めても
一体どこに行けると言うのだろう 三歩進んでまた戻る
未だに慣れない重い砂の感触 でも希望に満ちた足取りはまだ軽く
目指す場所がどれほど遠くにあろうとも 絶対辿り着けるはずだよ きっと
誰も見たことがない約束の地 天空の楽園か黄金の街か
でもそこにもしたどり着けたとしても 本当に幸せになれるのだろうか
いくつかの朝と夜を超えた後 あったはずの光が見えなくなった
双眼鏡で辺りを見回してみると また左手の方に光が身えた
そんなことを何度何度も繰り返し もういくつの年を重ねただろう
今どっちに進んでいるのかわからない 捨てられない荷物が重くなる
歩いているとたまにオアシスがある そこに暮らしている人たちがいる
いつか旅人だった者たちが 幾人もその骨を埋めている
オアシスで過ごす日々はいつも幸せで 旅立ちの日はいつもたまらなく鬱だ
一歩踏み出した瞬間よぎる言葉 なんで歩かなければいけないのだろうか
例えば北に歩き続けたなら 砂漠の果てに辿り着けるだろう
それがわかっていたとして それをわかっていたとして
他の可能性を全て捨て まっすぐ歩き続けられるのは
天啓か極度の自信家か 正気なのは果たしてどちらか
ただ砂漠を歩いている 浮かぶ光を追いかけている
今度は何日持つのだろうか 偽物すら手に入れられない日々
それはあまりにも儚い光だから ほんの少しよそ見をする間に消えて
間違いを犯す猶予すらもらえず 無為な時間だけが流れてく
渡り鳥のようにひたむきに あるべき場所へ向かえたら
背中の荷物を投げ捨てて 軽やかに飛んでいけたなら
拾ってしまったガラクタの山 それだけが今まで手に入れられた答え
いらないものばかりに支えられて とうに破綻している存在証明
ただ砂漠を歩いている 重くなってく足をひきずって
昨日と明日の境界がぼやける 足跡は風の向こうに消えて行く
足を止めて見上げる夜空 一年前と同じ無数の輝き
動いているのは自分だから 彷徨うだけでは変わらない空
少し休んだらまた歩き出す 一番近くに見える光の方向
無限回廊織りなす現状と幻想 未だにつかない最後の覚悟
やがて世界が白み出す 相変わらず重い背中の荷物
砂と風が溶かした感傷 登る太陽 また始まる今日
ただ砂漠を歩いている
双眼鏡を覗きながら