金の愚針
燃える様な恋は赤色で、沈む様な悲しみは青い色。君が紡ぎたい想いの丈は如何ほどかな。
愚針と書いて《ぐしん》と読む。
人間の身体から感情を糸として紡ぐ金の針。嘗ては愚者の黄金であった物を加工した品。針に刺されても肉体的な痛みは無く、代わりに糸として引き抜いた思いの丈の分だけその感情は対象の内からは消え去ってしまう。
糸の出なくなるまで根こそぎ剥いでしまえば当然、持ち合わせていた感情を消失してしまう。然し、感情の噴出そのものを抑えるでも無いので再起させる事は基本的に可能である。
金の愚針から造り出した布は慕布と呼ばれそれによって作られた衣服やハンカチ、人形などの物を身に纏うことで、元となった感情の影響を受ける。意識がその感情に寄り、また着用時間が長期に渡った場合は不可逆ではないながらもその人物の精神に作用を残すことがある。一種の同調効果である。
但し、異能性脳腫瘍患者の偏執に纏わる感情は黒いボロボロの糸屑としてのみ排出され糸として紡ぐことは不可能。