バイエル
妻さんが、ピアノを人生でふたたびやってみよう、という流れになった。そうしたら娘も弾いてみたいと言い(息子も、鼓笛隊のピアニカで弾いた曲を弾くと言って割り込み)、子供の初心者用の楽譜を買うことになった。 で、妻の昔の記憶にならい、『子供のバイエル(上)』。私はどちらかというと、「指一本からひけるヒット曲、指番号とカタカナのドレミふりがな付き」みたいな本がいいかなと思っていたのだけど。 で、ついでに私もそれを読んでいた。どれくらい簡単なものなのか、と。「つまらない」「つまらない」と言われるけど、どれほどなのかと。
究極だった。
最初のワンフレーズ・3小節が、親指と人差し指だけ使って、「ドレドレ・ドレドレ・ドー」。
「ちょうちょう」や「かっこう」が出てくるのが、譜面のページだけで数えて17ページ目。
究極に合理的な反復練習の、筋トレみたいな運指教本だった。音楽の世界の公文式みたいだ。 いやー、これ、大人になれば、逆に「これが上達に向かう最短距離」だってことは分かるので、むしろモチベーションが上がるくらいなんですが(「ほほう、これは、俺の弱い心を試しているのかな?」的な上がり方もする)、そりゃ子供がこれやらされたらトラウマになるわな。
むしろ、学校みたいな “おもて” では指一本ヒット曲みたいなことをやっておき、裏の世界に伝わる “それでも勝ちたい奴のための裏マニュアル”としてバイエルがある、というほうが本当じゃないかなあ、ナラティブなありかたとしては。
「バイエル」と「バイブル」の音の並びが似ていてまぎらわしいけど。
日本での決定的な地位を保ち続けてきた[他、韓国でも盛んに使用されている。ドイツ語・フランス語・英語・イタリア語・スペイン語・チェコ語など、さまざまな言語でも出版されている。
問題として、右手がメロディー左手が伴奏というパターンが多いこと、調性に限りがあること、奏法に偏りがあること、曲数が多く、また曲名無しの番号の連続でモティベーションが損なわれやすいことなどが指摘されている。
米国ではバイエルはごく少数派に過ぎず、トンプソンやバスティンメソード、バーナムの初級教本が多く使われている。
欧州ではドビュッシー、ショパン、バルトーク、カバレフスキーなどの初級小曲集を使用することが多く、バイエルの使用は限定的である。