第8回:資料の選択と収集
到達目標
1.なぜ収集方針が必要か。
2.選書にはどのような考え方があるか。
蔵書
図書館が集める資料の集合
図書館の過去・現在・未来
扱うメディアの多様化 → コレクション
蔵書の形成・維持・発展
図書館の目的
✖ 資料を所蔵すること
○ 所蔵した資料が利用されること
蔵書構成 collection development
「蔵書が図書館サービスの目的を実現する構造となっているように,資料を選択して収集して計画的に蔵書を形成,維持,発展させていく意図的なプロセス」(「辞典」)
蔵書構築,蔵書形成とも
蔵書の更新
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必要な資料の入手と,不必要な資料の排出
蔵書構成のサイクル
選択:蔵書に加えるかどうかを選択・判断
収集:必要な資料を集めてきて蔵書に加えること
蔵書評価:収集方針と照らして,蔵書の強みと弱みを把握・評価
除架:不要な資料を書架から除くこと
除籍:図書館の蔵書記録から資料の記録を削除すること
蔵書更新の意義
新鮮で魅力的な蔵書
内容の古い資料を除去 → 信頼の増大
書架維持のためのコストの節約
資料選択
資料を収集するか図書館が判断
以前は選書(図書選択)
収集方針
どのような蔵書を構成していくかの方針
蔵書構成方針,蔵書構築方針とも
選書基準など(選択|選書|選定)(基準|方針)もほぼ同義
恣意的ではない資料収集,目標のための一貫した蔵書構成
図書館の自由に関する宣言「第1 図書館は資料収集の自由を有する」
1. 図書館は、国民の知る自由を保障する機関として、国民のあらゆる資料要求にこたえなければならない。
2. 図書館は、自らの責任において作成した収集方針にもとづき資料の選択および収集を行う。その際、
(1) 多様な、対立する意見のある問題については、それぞれの観点に立つ資料を幅広く収集する。
(2) 著者の思想的、宗教的、党派的立場にとらわれて、その著作を排除することはしない。
(3) 図書館員の個人的な関心や好みによって選択をしない。
(4) 個人・組織・団体からの圧力や干渉によって収集の自由を放棄したり、紛糾をおそれて自己規制したりはしない。
(5) 寄贈資料の受入にあたっても同様である。図書館の収集した資料がどのような思想や主張をもっていようとも、
それを図書館および図書館員が支持することを意味するものではない。
3.図書館は、成文化された収集方針を公開して、広く社会からの批判と協力を得るようにつとめる。
選択者
資料選択に関わる職員
選択者の条件(前川恒雄『われらの図書館』)
本を知っていること
利用者の気持ちを知っていること
図書館の使命を自覚していること
→ 資料に関する知識,資料を知る手段についての知識が必要
資料選択と図書館の自由
『窓際のトットちゃん』事件
学校長が「女優が書いた本」は学校図書館にふさわしくないと購入禁止を指示(井谷「学校図書館の選書問題に関する一考察」より)
『絶歌』問題
凶悪事件の加害者が執筆した図書を図書館は収集・提供すべきか?
選択と検閲
選択から漏れたもの → 図書館に収集されない → 利用者の目に止まらない → 出会いの機会が(少)なくなる
= 選択によって,読者と本との出会いの機会を奪うこともできる
図書館員の嗜好に基づく選択 → 図書館員による検閲
成文化された収集方針に基づく一貫した選択が必要
資料選択論
価値論
図書自体の価値を基準として価値の高い図書を選択
要求論
利用者の要求を基準として要求の高い図書を選択
予約やリクエストによる利用者の要求の把握
ゆるやかな妥協
片方の理論の排斥はできない,一方でちょうど中間に立つことも難しい
両方のバランスをとることが必要
ライトノベルを用いた極端な例
価値論「マンガのような小説を集めるのは図書館の役目ではない」
要求論「若者が求めていて,貸出も見込めるので収集しよう」
妥 協「幅広い読書につながるような良質なライトノベルを収集しよう」
日本での資料選択論の変遷
明治~戦中:価値論
国民教化の手段としての図書館 → 「良書」の提供
→ 図書館の自由に関する宣言(1954)
知識の保存が目的
中小レポート以降:要求論
1963(昭和38)年に日本図書館協会が出版した中小公立図書館運営の指針.略称は『中小レポート』.日本図書館協会中小公共図書館運営基準研究委員会が,3年間にわたる全国公立図書館の調査と検討をもとに,主に人口5万~20万の市の図書館を対象に,図書館改革の指針を示したもの.中小公立図書館の機能・歴史・現状,サービス,資料,管理,施設などを全般的に解説している.図書館の基本的機能は資料提供であること,図書館が十分利用されるためには高水準の資料購入費が必要であること,直接利用者にサービスする市町村立図書館が公立図書館の中心であることなどを明らかにした.
住民の要求に応える図書館 → 貸出増
1980年代:要求論と価値論の統一
要求論 → 質の悪い蔵書?
前川恒雄による「質の高い本」
読者が何かを発見するような本,具体的で正確な本,美しい本
1980年代:伊藤昭治(いとうしょうじ)・読書調査研究グループによる図書選択論
様々な調査に基づく実証的な資料選択論
予約への高い評価
要求論に立場に立つ主張
2000年代:ベストセラー問題・「無料貸本屋」批判
図書館のベストセラー複本購入と貸出による経済的損失
→ 図書館の社会的・文化的役割
価値論への回帰
資料選択の方法
直接選択:実物に基づいて判断
見計(みはからい):書店や取次が持ち込んだ資料から選択
書店や取次へ出かけて選択
間接的選択:網羅性の追求が可能,時間・場所の節約
書誌・出版物リスト,選定図書目録,パンフレット,書評などから選択
選書ツアー
「図書館利用者が図書選択に参加するもの」(安井一徳『図書館は本をどう選ぶのか』)
一定の予算に対して,書店等で参加者に資料を選定してもらう
大学図書館でも選書ツアーの取り組みは盛んに行われている
「司書の専門性」や「参加者への迎合」に関する批判
現在公共図書館ではあまり実施していない
https://www.youtube.com/watch?v=TtOpPvu2Ntc