神島裕子『正義とは何か』
哲学が追求する真理と、人びとの民主的な決定には緊張関係がある
<正義とは何であるか>を決めるのは誰か
民主主義を尊重するということは、民衆が法を作るということの権利(正しさ)を承認すること
たとえそれが悪法であっても
ロールズの考える正しい社会では、社会全体の福祉の増大よりも、個人の自由と権利が一定の優先権を持つ
古典的功利主義への批判
正義の二原理
基本的諸自由の平等
ある人の言論の自由が誰かの人身の自由を守るために制限される場合がある
ヘイトスピーチなど
縮減される自由の幅は最小限でなければならない
できる限りの社会的・経済的な平等
格差原理
最も不遇な人びとの最大の便益に資するものであることを要求する
最悪の結果が最もましな選択肢
公正な機会均等の原理
職務と地位に付帯する社会的・経済的不平等は認められる
人種や性別、家柄でその職につけない人がいない場合に限る
基本的な権利と義務を分配し、社会的協働が生みだした相対的利益の分割を決定する方式
アリストテレスの分配的正義とは異なり、各人の功績の有無に関わらず、社会的諸価値を社会全メンバーへ分配することを要求する
社会的・経済的不平等は政治的平等を妨げる
政党と選挙が私的な寄付でなく公的資金で賄われることでロビー団体に有利な方の制定を防げると考える
アマルティア・センによるロールズ批判
平等であるべきは基本財ではなく基本的ケイパビリティ
人は多様なので同じ種類で同じ量の財が分配されても同じケイパビリティを享受できるとは限らない
財は不平等に分配しなければならない
不道徳なものを求める自由はあるか?
それを国が保障するのか?
古典的リベラリズムからの枝分かれ
現代的リベラリズム
夜警的国家から福祉国家への転換
リバタリアニズム
古典的リベラリズムの本流
4つの類型
無政府資本主義
課税は国家による窃盗
ロスバード
すべての機能を民営化するべき
公共性をどう担保するかが疑問
最小国家論
ノージック
『アナーキー・国家・ユートピア』
左派リバタリアニズム
福祉国家型の事後的な再分配は否定するものの、初期所有の平等を求める種類のリバタリアニズム
福祉リバタリアニズム
人道主義的な古典的リベラリズム
マース・ヌスバウム
アリストテレス、カント、ミル、初期マルクスを基盤とした独自のケイパビリティ・アプローチから正義論を展開
新アリストテレス主義
人間性の完成を目指して全身全霊で生きることができるとしても、個人的選択によって、そうしなくてもよい
グローバルな不平等
どの国に生まれたかではなく、どの階層に生まれたかが人生の見通しを大きく左右する
ミラノヴィッチ『大不平等』
ポッゲ『なぜ遠くの貧しい人への義務があるのか』
コスモポリタニズム
ピーター・シンガー
「海外援助機関に寄付せずに豊かなライフ・スタイルで暮らすことはエチオピアに渡って農民を何人か射殺することと倫理的には同じことになる」『実践の倫理』