井奥陽子『近代美学入門』
現代私たちが使っている芸術という概念は近代になって初めて生まれた
古代や中世にも絵画、彫刻、詩、音楽といった概念はあったが、これらをひとつのまとまりとして「芸術」と呼ぶ考えはなかった
アルス(ars)はギリシャ語のテクネーをラテン語に訳すときにつくられた
英語ではそれぞれが派生して「アート」と「テクニック」になった
技術を意味し、狩猟術、農業技術、航海術、料理術、医術などが含まれる
日本語に訳すとしたら学芸が近いが、学問に力点を置いている訳ではない
18世紀中頃より前の「芸術」という語で原語が「アート」であれば技術や学芸と思ってよい
古代ギリシャにも芸術はあったとする説
テクネーの一部である「模倣(ミメーシス)の技術」は我々が芸術と呼んでいるものと同じように思える
しかしながら近代以降の「芸術」という概念と同一視できない、というのが本書の立場
近代に芸術という概念が成立したのは「アート」という一語で芸術を意味するようになったことにある
詩や絵画
ここでの「詩」は文芸全般を指す
台詞がなく語り手のナレーションだけのものは模倣の技術から区別される
演劇も含まれる
描かれた対象の"現物"が別にあるという考え方
プラトンとアリストテレス
建築は別ではないので「制作の技術」とされる
現代の芸術とは領域も一致しない
自由学芸
リベラルアーツの前身
自由とは「奴隷ではない」という意味
古代ギリシャ・ローマでのエリート向けの教養
機械的技術
身体を使う技術
ものを制作する技術、医療、造形芸術
卑俗な技術、奴隷の技術と呼ばれた
美は倫理や神学のなかで扱われた
エイブラムズ『鏡とランプ』
模倣理論
現実を再現したもの
作品と描写対象
忠実に反映する鏡
表現理論
現実から作者が感じたことを表現したもの
作品と描写対象と作者
自ら光を放つランプ
受容者は作品を通じて作者の感情を追体験できる、追体験すべきと考える
作品と作者は切り離せない
18世紀末〜19世紀中頃ロマン主義