「先行研究の要約テンプレート」の説明と応用例
概要
大学(院)への進学直後の段階では、そもそもメモを「使う」という表現に違和感を覚えるかもしれない。
いずれ腑に落ちるはず。
今は「1文献につき1つのWordファイル、といったやり方が得策でない」という前提だけ受け入れて聞いてほしい。 我々は書くために読んでいる。
ただし、「読む」から直接的に「書く」へ移行できるわけではない。
「読む」段階の成果をメモに残し、そのメモを使いながら「書く」のが通常。
使いやすい文献メモとは?
円滑な情報管理のための要件
メモ自体を探しやすい
元の文献の内容を思い出しやすい
メモから元の文献に遡りやすい
メモの内容を検索しやすい
アイディアの創発を促すための要件
メモを複製しやすい(気軽に編集できる)
メモを別の形式に変換しやすい
メモ同士を並べて一覧しやすい
メモ同士の関係を可視化しやすい(グループ化や関連づけの作業がしやすい)
自由に改編して使えばいいと思う。
ただし、汎用性を重視したつもり。例えば……
理論研究の場合、Ⅲでは「検討された理論学説」をまとめればよい。
レビュー論文の場合、Ⅳでは「レビューの手続き」をまとめればよい。
https://gyazo.com/5c1c4595099629b39a0694885eeeea00
https://gyazo.com/290f43738067d9c79a608faa6dc86b81
初学者へのアドバイス
いきなり完成させる必要はない。
特に、研究の初期段階に当てはまる。
例えば、大量の文献をダウンロードしてきてアブストラクトだけ読みまくる時期がある。 そのような段階では、全ての項目を埋めることができなくてもよい。
前掲のテンプレートに固執する必要はないが、意図は理解してほしい。
スライド形式にしているのは、メモのボリュームを有限化するため。 ボリューミーすぎるメモは使いづらい。
自分にとって重要な文献だと判断すれば、当然ながらより詳細なレジュメを作成する。 その上で、レジュメから要点を抜粋してコンパクトなメモを別途作るとよい。
ゼミ生向けのアドバイス
クラウドなので自動的に同期、バックアップ、バージョン管理をしてくれる 教員が進捗状況を把握しやすい
スライド内のオブジェクトを一括コピーするだけで、適切な順序で文字列を取得できるようになっている
メモの使い方の具体例
メモが蓄積されてきたら、下記のような方法でアイディア出しに役立てることができる。
これらのアプローチは全て並行して用いてもよい。
むしろ研究工程をリニア化することは諦めて、試行錯誤を許容する心構えを持つこと。
研究仲間と一緒に試してみるのもよい。
マトリクス化
必要に応じて項目を増やしてもよい。
最初からマトリクス形式で文献メモを作る手もあるが、挫折しやすい気がする。
終わりが見えないので絶望的な気持ちになる
視覚的なノイズが多くて気が散る
操作性が悪い
ある分野でどのような研究が盛んで、逆にどのような研究が不足しているかを特定しやすい。
文書をマトリクス形式で比較検討する一般的なテクニックについては『質的データ分析法』第8章などを参照。 https://gyazo.com/57ffaae574883ca20147c28f195518f8
カード化
A4用紙に2アップ〜4アップくらいの大きさが妥当。
机の上で並べ替えたり、模造紙やホワイトボードに貼ったり、ステープラーで連結したりする。
文献同士の関係性を吟味したり可視化したりする用途に向いている。
とりあえず印刷して眺めているだけでもアイディアが刺激される可能性は高い。
デジタルで行う場合
大学の(.acドメインの)アドレスで登録すれば、有料プラン相当の機能が使える。
https://gyazo.com/6522f8fc5e7fe1e67b91f04c91c9bf59
Wiki化
取っつきづらいかもしれないが、理解できれば強力。
なお、このページはScrapboxで作成されている。
補足
オリジナル版の6項目
1. どんなもの?
2. 先行研究と比べてどこがすごい?
3. 技術や手法のキモはどこ?
4. どうやって有効だと検証した?
5. 議論はある?
6. 次に読むべき論文は?
フォーマットに言及している記事の例
http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/a/aliliput/20150804/20150804120029.jpg