それは「データ・ドリブン」ではなく「データ・インスパイアド」だ
正しい答えが存在するということは、そこに至る意思決定はすでに下されている
意思決定で重要なのは、データを探す前に、判断の文脈を組み立てることである
不確実な状況で意思決定を下すための規律を学ぶ統計学でさえ、演習の大半は、文脈があらかじめ決まっている。教官が仮説を立てて、「Aおよび/または(and/or)B」という構造の質問を学生に提示するため、正しい答えは1つしかない。正しい答えが存在するということは、そこに至る意思決定はすでに下されている
それは「データ・ドリブン」ではなく「(感情的な)データ・インスパイアド」だ
多くの意思決定者は、数字を見て、意見を組み立てて、判断を下すことを、データに基づく「データ・ドリブン」だと思っている。しかし残念ながら、そのような意思決定は、せいぜい「データ・インスパイアド」だ
数字の中を泳ぎ回り、感情的なティッピング・ポイント(閾値)に到達したら決断を下す。データにインスパイアされた意思決定は、たしかに数字の近くにあるが、数字が決断を導くのではない。その決断は、数字とは違うところから生まれている。意思決定者の無意識のバイアスの中に、最初から決断があったのだ
データに基づいて結論を出した後に、自由にゴールポストを動かす(自由に動かすことが出来るなら)
データにインスパイアされた意思決定の大きな問題点は、確証バイアスの存在である。確証バイアスが働くと、自分がすでに持っている視点に合わせて事実を理解しようとする。データに基づいて結論を出した後に、自由にゴールポストを動かせるなら、誰でも無意識に動かすだろう。それを防ぐ方法は、あらかじめゴールポストを決めて、後から動かしたくなる誘惑に耐えることだ
だからこそ行動経済学者は、情報に触れる前に、判断基準を決めるように心がけている。これは確証バイアスに対処する有効な手段であり、私たちの多くに習慣として染み付いている。たとえば、チケットの値段を調べる「前」に、自分の予算の上限を確認するだろう