K・シュヴィッタースの《メルツバウ》
クルト・シュヴィッタースの建築的活動および綜合芸術作品のことを指す。メルツとは、「KOMMERZ」(商業)という文字の一部であり、その文字が広告から切り取られてシュヴィッタースの絵画に貼り付けられた際に、「MERZ」となったことに由来する。シュヴィッタースは自身の絵画を「メルツ絵画」と呼ぶようになり、「メルツ」は多岐にわたる彼の芸術活動すべてを表わす概念となった。メルツバウ(メルツ建築)とは、シュヴィッタースのライフワークであり、建築の内部空間を「キュビスム的かつゴシック的」な幻視の光景へと変容させる大規模なコラージュ/コンストラクション的作品のことである。シュヴィッタースは計4回にわたってメルツバウに取り組み、最初のハノーファー・メルツバウは1923年にアトリエで開始され、10年以上をかけて徐々に構築された。しかし、もっとも完成度の高い(とはいえ、シュヴィッタースは、永遠に未完成であることをメルツバウの「原理」に据えていた)
シュヴィッタース自身の生を審美化するような幻想的でグロテスクな側面を持ちながら、表現主義、構成主義、ダダ、キュビスムなどの20世紀の視覚文化が複雑に交錯するアーカイヴ的な多層性を特質とする。