適応機制
欲求そのものを満たそうとするのではなく、それが満たされない状態を正当化するなど、別の方法で欲求不満を解消しようとする心理的機能 欲求が満たされない自分自身を防衛するという意味から「防衛機制(ぼうえいきせい)」と呼ばれることもある Adjustment mechanisms
table:適応機制の種類
攻撃 物や他者に対して、感情をぶつけたり、乱暴したりする。家庭内暴力や組織におけるパワハラのような犯罪として現れることもある。また、自傷といった自分自身への攻撃に向かうこともある。 逃避 困難な状況や場面をさけたり、ほかのことに熱中して問題に向き合うことをさけたり、空想の世界に逃げたりする。必ずしも悪いことばかりではなく、新たなチャレンジや、芸術的な創造力の源泉となることもある。 退行 過去への逃避であり、現在の問題を避けるために楽しかった過去に生きようとする。赤ん坊や子供のように振舞って、依存的な態度を示すことがある。一人っ子だった家庭に、次の子供が生まれるときに、上の子供が示す態度として有名。 拒否 課題となっている事実が存在しないかのように振る舞う。障害を認めなかったり、発生した事実を認めないといったことが起こる。現実と向き合うだけの準備ができていない場合もあり、成長とともに振り帰ることができるようになる場合もある。 隔離 自分に関連することであっても、勤めて冷静に、客観的に観察することで、評論家のように振る舞う。起こっている事実から、感情を切り離す技術でもある。苦しみを生み出している困難と向き合う方法でもあり、悪いこととはいえない。 代償 本来の目標がかなわない場合に、容易な目標を達成することで、満足を得ようとする。特定の大学に受かりそうもない場合、別の大学で満足するといった代償は、誰にでも経験のあるものだろう。 合理化 自分の欠点や失敗をそのまま認めず、社会的に容認されそうな理由をつけて、それを正当化する。いわゆる「言い訳」に相当する。それが「言い訳」にすぎないことを、本人もわからなくなってしまうと危険。 昇華 人間が避け難くもっている性や破壊の衝動といった「暗い欲求」を、スポーツや芸術など、社会的に価値の高いことに向かうエネルギーに変換すること。多くの偉大な表現が、この昇華によるものとされる。 同一視 自分の欲求が満たされなくても、心理的に自分に近い他人の行動を、あたかも自分のことのように感じて、欲求が満たされているように感じる。カリスマ的な人物のファッションを真似るといった行為が、この同一視によるものと考えられている。 投影 自分自身がもつ不安を引き起こしている衝動や欲求を否認し、他者にその衝動や欲求があるように考える。自分が極端な嫌悪感を感じる他者の中には、むしろ、自分自身に似た「嫌な部分」がある可能性もある。 抑圧 過去の不快な記憶が抑制されており、楽しいこと、いいことだけが思い出せる状態。脳が、自らに対してトラウマになるような体験を思い出せなくさせることで、その個体の精神を防衛していると考えられている。 反動形成 自分がもっている否認すべき感情とは正反対の行動をとること。本当は好きな人に対して冷たくしてしまったり、本当は好きなことを人前で否定してしまったりといった行動が、代表的な例とされている。