ヒエラルキーの影響があると生死に関わることであっても進言できない
私が明らかな事実に気づけなかったことには、(中略)ガイドと顧客の関係性が影響していた。ハリスと私は身体能力も技術的な専門知識の量も似ていた。たとえばもし私たちが2人で、対等のパートナーとして、ガイドなしの登山をしていたとしたら、彼が危険な状況にあったことに気づかないなどあり得なかっただろう。しかしこの公募隊では、彼は私やそのほかの顧客を先導する、いわば無敵のガイドのような立場に置かれていた。我々はガイドの判断に異を唱えてはならないと強く教え込まれていた。そんな私の頭の中に、彼が危険な状況にあるかもしれないという考えはまったく浮かばなかった。私の助けをガイドが一刻も早く必要とするなどとは思いもしなかった。