「天才族」と「ネットワーク族」のイノベーション比較
こうした点について、ヘンリック教授は次のように考えてみるといいと言う。
たとえば、2つの部族が弓矢を発明すると仮定する。一方は大きな脳を持つ頭のいい「天才族」。もう一方は社交的な「ネットワーク族」。 さて、頭のいい天才族は、1人で個人的に努力して、1人で想像力を働かせ、人生を10回送るごとに1回大きなイノベーションを起こすとしよう。一方ネットワーク族は、1000回に1回のみだ。とすると、単純計算では、天才族はネットワーク族より100倍賢いことになる。しかし、天才族は社交的ではない。自身のネットワークにはたった1人友人がいるだけだ。しかしネットワーク族は100人友人がいる。天才族より10倍社交的だ。ではここで、たとえば天才族もネットワーク族も全員が1人で弓矢を発明し、友人から意見を聞くとしよう。ただし友人1人につき、50%の確率で学びが得られるとする。その場合、どちらの部族がイノベーションを多く起こすだろう?実はこのシミュレーションの結果は我々の直観と相容れない。天才族の中でイノベーションを起こすのは、人口の18%のみにとどまるのだ。1人で発明にたどり着くのはその半数。一方ネットワーク族は、99.9%がイノベーションを起こす。1人で発明にたどり着くのは残りの0.1%のみ。しかしそのほかはみな友人から学び、改善のチャンスも得られ、さらにその知識をネットワークに還元できる。それがもたらす結果は明らかだ。これまでの実験データや歴史上の数々の実例を見てもわかる。次のヘンリック教授の言葉がその真実を突いている。