縦の旅行
エリートはしばしば世界じゅうを移動するが、どこでも同族のエリート同士・ブルジョワ同士としか交流していない、つまり広く世界を見聞しているつもりでも階級・階層的にはフラットな「横の旅行」しかできておらず、近隣に住んでいる非エリートについてはまったく知らずに済ませている、といった意味になる。
彼らはどこに行っても同族としかつるまない。肌の色や目の色、ジェンダーなどはさまざまかもしれないが、ポリシーやライフスタイルの面では大同小異だ。どれだけ航空会社のマイルが貯まろうとも、それで知ることのできる世界は知れている。 そうした「横の旅行」に終始するエリートたちが、自分たちの視野の狭さを自覚しているならまだいいが、「自分たちは世界じゅうを旅するグローバルな人間で、多様な価値観に触れているコスモポリタンな人間だ」と勘違いしていたら深刻である。
『ドラえもん』の主要キャラクターたちである。庶民的なサラリーマンの家の子であるのび太、小売業の家の子のジャイアン、金持ちの家の子のスネ夫がいた。しずかちゃんや出木杉君はプチブルジョワの家の子だろうか。 『ちびまる子ちゃん』の描写もそれに近い。花輪くんや城ケ崎さんのような子がいて、たまちゃんや丸尾くんのような子もいて、まる子や永沢くんのような子もいて、教室は多様だった。