ジンクピリチオン効果
どのようなものかは分からないのに、その言葉の響きだけで「すごそうだ」と思ってしまう心理的な反応
洗剤や化粧品のトップ企業である花王のベストセラー商品「メリットシャンプー」のCMを覚えている方も多いだろう。30年以上続いたそのCMのキャッチフレーズは、常に「ジンクピリチオン配合」であった。競争の激しく、しかも効果の違いの解りにくいシャンプー市場で、一つの銘柄が何十年もトップを競うというのは極めて稀であることから考えても、CMの効果は絶大であったと言わねばならない。 「ジンクピリチオンが何であるのか、つまり、動物なのか、鉱物なのか、植物なのか。甘いのか酸っぱいのか、硬いのか柔らかいのか、 押し出しが強いのか人当たりが良いのか。そういうことを知ったとしてもあなたに何の利益があるだろう。そのようなことを知っていることを、無駄な知識と言うのである。ジンクピリチオン配合。虚心に、この言葉だけに耳を傾けなければならない。そしてそうすれば、あなたは必ずこう思うはずなのである。なんだか、すごそうだ。その心の声こそが、この言葉を聞いた時の正しい反応なのである」