「ふつう」の人生とは
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日下田岳史准教授(大正大学)が作成した進路チャート まず、「ふつう」と言われそうな人生を見ていきましょう。中学校卒業時点の1000人のうち、全日制・定時制の高校を3年で卒業したのは896人です。4年制大学に現役進学したのは413人で、そのうち4年で卒業したのは331人。すぐに正規雇用されたのは240人で、そこから3年以内に離職しなかったのは163人でした。
大卒者が想起する所謂「ふつう」の進路は、「中学校卒業後は高校に進学し、4年制大学を4年で卒業して、正規雇用で同じ企業に勤め続ける」かと思います。しかし、実際にそのような「ふつう」の人生を送ったのは1000人中の163人でした。もっとも、大学進学時の浪人や大学在学中に留学して卒業を伸ばした人などを含めればもう少し増えるはずですが、それにしても「みんな」の進路ではないことは明らかです。
「ふつう」ではない進路に着目してみましょう。中学校卒業後、全日制・定時制の高校に進学して3年で卒業したのは896人でした。ここには3年で通信制高校を卒業した人は含まれませんが、10人に1人は既に一般的ではない進路になっているといえます。実際、この学年が高校1年生だった2009年度に約5.7万人の高校生が中退しています。毎年、万単位の人たちが、いわゆる「ふつう」から離脱しています。そのうち、どれだけがみなさんの知り合いでしょうか。
私たち一人ひとりは偏った人生を送っています。出身家庭のSES、出身地域、性別という3つの観点で社会全体の分布と同じような友人がいる人は少ないはずです。教育とか社会のあるべき姿を語るとき、それはこの社会を生きるすべての人が対象となっているはずです。で、あれば、社会全体を対象にしたデータに基づいて議論しないと、的外れになり得るわけです。