2020-06-17の課題について
締切:6月19日(金)朝8:00
課題
ブラウン管事件の第3段階の判断に関して、最高裁判決とMT東京高裁判決とを比較し、相違点を説明してください。また、その相違点に関する意見(いずれかが優れている、同等である、など)を簡潔に説明してください。(全体で210字程度を標準と考えていますが、字数には厳格にはこだわりません。)
解答例
あくまで「例」。他に、よりよい解答はありました。
第3段階の論点について、ブラウン管事件の最高裁判決は、一般論を述べず、事実関係を列挙して結論のみを述べる方法(いわゆる「事例判決」の手法)を採用した。それに対し、MT東京高裁判決は、条文に即した場合の考え方と、取引の実態(に関する裁判所の理解)に即した場合の考え方とを掲げつつ、両者を折衷した一般論を展開した。いずれにも長所があると考えられるが、責任ある判断をし、社会に指針を与え、批判的議論への糸口も与える「良い法律論」を展開したという意味で、MT東京高裁判決のほうに好感を持つ。
最後の一文は、例えば、次のようなものも考えられます。
最高裁判決の手法のほうが適切であると考える。競争法の国際管轄権の問題のうち、第3段階の論点については、まだ世界的に十分な議論が行われていないようである。この段階では一般論を示さず本件の解決のみを優先するのも、日本の最上級審裁判所の一つの在り方である。
甲乙つけがたい、という解答もありました。
ポイント
第3段階について、最高裁判決は一般論を述べていない、MT東京高裁判決は一般論を述べている、と書けば、明瞭となると思います。
白石が東京高裁判決・最高裁判決の結論に批判的である理由
リクエストが多かったので答えます。
これと異なる考え方があることを否定するものではありません。
世界各国の需要者に影響を与えるカルテルや企業結合が世界各国の競争法の問題となり得るのは常識化しているが、それは、世界各国の需要者に向けて、それぞれ、取引をしているからである。それに対して本件は、1つの取引が、国外所在需要者と自国所在需要者に同時に影響を与えるということになっており、上記の一般的に受け入れられている多重適用とは異なる意味での多重適用の可能性をもたらすものである。
その観点から、需要者の機能のうち最も中心的なものを一つ選ぶとするならば、商品・役務そのものの流れに注目すべきである。意思決定者がどこに所在するかということは、経済の実態とは関係なく自在に動かしやすいものであり、それを基準とした法適用をすべきではない。
東京高裁判決・最高裁判決のような結論とした場合、「意思決定者所在国・商品役務受領者所在国」を、「東南アジア・日本」から「米国・日本」や「中国・日本」にずらした場合にどのようなことを起きるかを考える必要がある。例えば、日本国内の取引に関する日本企業(供給者)同士の企業結合であっても、需要者側の意思決定権者が外国にいれば、当該外国の競争法の介入を認めることになりかねない。