2020-05-27の課題について
問題
行為時に最高裁による解釈が示されていない条文によって刑罰を科することの是非について、280〜420字程度以内で説明してください。280〜420字程度を標準としますが、若干の増減は差し支えありません。
解答例
結論が逆でも、理由づけを明瞭かつ説得的に論じていれば、同等に評価される。
私は、差し支えないと考える。理由は、以下のとおりである。まず、条文は自然言語によって書かれており、意味の幅が必然的に存在する。あらゆる状況を想定して条文を書くと、いたずらに複雑となり、かえって、わかりにくい条文となる。細かいことまで規定しようとしために立法作業が紛糾し、必要な立法を実現できなくなる場合もあり得る。将来の新たな事象に全く対応できないこととなると、法の潜脱が容易となる。
もっとも、特別刑法を含む広義の刑法においては、刑罰という強い国家権力の行使に対し歯止めをかけるため、刑罰の謙抑性や罪刑法定主義といった基本原理が定着している。罰則規定の解釈は、民法などのような条文と比較した場合には、狭い解釈が求められる。それでも、文言の国語的意味を中心としつつ規制の趣旨に沿う解釈であれば、許容されるべきである。
メモ
最判平成8年11月18日という興味深い最高裁判決を指摘してくれた学生がいました。余力あらば、調べてみてください。
罪刑法定主義は、国家権力に歯止めをかけるため、法律に(明確に)書いてあるものしか罰してはならない、という考え方です。法律に定められているものは罰するべき、という考え方ではありません。
言葉・約束事
「適応」でなく「適用」。
日本語として「適応」を使うべき場面はあるが、法令の条文を事実に当てはめるのは「適用」。
刑罰は「科する」。租税・課徴金など非刑事のものは「課する」。
「手続き」でなく「手続」。
「欠缺」(けんけつ)は、読めたほうがよいが、あまり自分から書かないほうがよい場合が多い。(古い言葉なので)
課題で、例えば、「手続き」と書いたからといって減点はしませんし、送り仮名のルールを学生が覚え込む必要はありませんが、「送り仮名にもルールがある」ということは、知っておくのがよいです。