認知的分業
トニ・ジュリアーノとダニエル・ウェグナーが実験室で証明した。交際期間が三カ月以上のカップルに、コンピュータのブランドなど、さまざまな事柄を記憶してもらった。同時にカップルにはそれぞれの事柄について、二人のうちどちらが詳しいか評価してもらった(たとえば一人がコンピュータ・プログラマで、パートナーがシェフなら、前者のほうがコンピュータには詳しい)。その結果、カップルは記憶の任務を分担し、相手に相手の詳しい分野の記憶を任せる傾向があることが明らかになった。
二人のうち、どちらかだけが詳しい事柄については、詳しいとされた方が記憶し、パートナーは忘れる傾向が見られた。パートナーの得意分野については、記憶しようという努力がおざなりになった。言葉を換えれば、相手の詳しい分野については、誰もが情報を記憶して思い出す役割を相手に委ねた。
人は特定のコミュニティにおいて、自分が覚えるべきことを覚え、認知的分業に最大の貢献をしようとする傾向がある。他のことを記憶するのは、その分野のエキスパートにまかせる
言語、記憶、関心をはじめ、すべての知的機能は認知的分業という原則に従い、コミュニティ全体に分散しながら働いていると考え